研究課題/領域番号 |
12J05961
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
赤星 聖 神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 国内避難民(IDP) / UNHCR / アフリカ統一機構 / 国際的アジェンダ設定 / 実践の共同体 |
研究概要 |
平成24年度(初年度)は、(1)修士論文の修正・公表、(2)暫定的な分析枠組みの構築、(3)UNHCRによる規範形成過程の研究に取り組んだ(3)は平成25年度も継続の予定)。 (1)国内避難民(IDP)保護の国際的な発展過程の全体像をとらえるうえで、修士論文において明らかにした冷戦期のIDP支援は、前半部分のターニング・ポイントとして重要な位置を占める。実証性を高めるために、東京で追加の聞き取り調査と資料調査を行った後、英語論文を執筆した。本論文は、査読を通過し、平成25年度に掲載される予定である。本論文では、アフリカ統一機構(OAU)が、IDPを国際的なアジェンダとして設定する上で重要な役割を果たしたことを明らかにしたと同時に、IDPが、難民保護の一部としての付随的な支援対象から、独立した支援対象としてみなされるようになったという、論理転換が起こったことを解明した。 (2)調査を進める中で、本事例においては、国連諸機関、専門家集団、国際・ローカルNGOといった非国家主体の実践活動が中心となって政策形成に影響を与えていることが明らかとなってきた。そのため、国際的な実践を通して「実践の共同体(Community of Practice)」が形成されるとしたEmanuel Adler and Vincent Pouliot, International Practice (Cambridge UP, 2011)などを参照し、暫定的な枠組みを構築した。 (3)本部分は、2013年度前半も継続予定である。UNHCRは1970年代からIDP支援に携わっているという点で、最も重要なアクターの一つであり、詳細な検討を行う必要があるといえよう。2013年2月、UNHCR本部(ジュネーブ)にて行った聞き取り調査・資料調査の結果、UNHCRは、IDP支援を予算体系にフォーマルに組み込むことで、各国への説明責任を果たそうとしてきたことが判明した。つまり、冷戦期のアドホックな対応から、制度化・体系化された支援内容へと変化してきたのである。その変化要因は、今後の検討課題であるが、一部については、2012年9月、人間の安全保障学会にて口頭報告(英語、事前審査有)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とほぼ変更なく進んでいる。2013年2月に行ったジュネーブでの調査の結果、現在公表されていない部分(特に、2005年度以降のクラスター・アプローチの導入、2010年度以降の予算制度改革について)の情報を得ることができた。平成25年度につながる成果が得られているといえよう。研究成果の公表については、査読付きの英語論文の掲載が決まるなど、当初の期待を上回る結果を残すことができた。 まずは、UNHCRが規範形成に与えた影響について調査を進めたうえで論文として平成25年度中の公表を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
その後、(a)規範的枠組み文書(「国内強制移動に関する指導原則」)の形成過程と、(b)国連人道問題調整事務所の成立過程とIDP支援における役割についての調査を進め、2013年夏、ブルーキングス研究所と国連本部(ニューヨーク)にて聞き取り調査を行いたい(bについては、ジュネーブでの聞き取り調査の結果、着想を得た)。(a)(b)ともに、論文としての投稿を目指す。最終年度には、これらの結果を総合し、mp保護規範の発展に関する包括的な研究書を執筆したい。また、来年度以降は、国際学会(ISAやBISA)での報告をめざし、積極的に応募していきたいと考えている。
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