研究概要 |
毎年1000種類以上の化学物質が新たに市場に出ている。しかし、有害化学物質を検出するための有効な手法は存在していない。現在、薬物の毒性評価に用いられている手法(Amesテスト、小核テスト)では偽陽性が50%近くになることが大きな問題である。このため、より特異性の高い有害化学物質検出法の新たな開発が急務である。我々は、新たな有害化学物質検出法を開発することを目的に米国NIH(National Institute of Health)、NCGC(National Chemical Genomic Center)と共同研究を行っている。 我々は、共同研究の第一段階として1,400種類の化学物質から構成されるPhaseI化学物質ライブラリーを使用した実験を行い、論文を発表した(Yamamoto et al,. 2011)。現在、私は米国NCGCに留学し、共同研究の第二段階として12,000種類の化学物質からなるPhaseIIライブラリーを使った実験を行っている。我々はこれまでにPhaseIIライブラリーを用いた一次スクリーニングを行い、データを統計的に解析した結果、約150種類の化学物質が毒性をもつことが示唆された。次の段階として、毒性を持つことが示唆された約150種類の化学物質の毒性を確実な手法で確認する必要がある。このために我々は、以下の三つの実験を実施する。1)細胞の化学物質への暴露時間を延長し、細胞生存率を比較する、2)DNA損傷時に誘導されるγH2AXを顕微鏡下で確認、3)染色体断裂を確認。申請者は、1)に挙げた試験を行うための実験条件の設定をこれまでに行い、最適な実験条件を見つけることに成功した。今後、一次スクリーニングの結果選ばれた約150種類の薬剤について妥当性試験をおこない、我々の開発した毒性試験の妥当性を評価する。
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