研究実績の概要 |
不均一系金属ナノ粒子触媒はその頑健性、特異な反応性から注目され、近年多くの応用例が報告されているが、不斉炭素―炭素結合生成反応において高い選択性と広い基質一般性を示した例は限られている。昨年度、高分子及び活性炭を混合した担体にRh/Ag二元ナノ粒子を固定化した触媒を用い、不飽和エステル類へのアリールボロン酸類の不斉1,4-付加反応の開発を行い、二級アミドを有するキラルジエン配位子を用いた際に非常に高い選択性で目的物が得られる事を見出した。本触媒(キラルナノ粒子)系は広範な基質に対し適用可能であり、医薬品など有用化合物の中間体合成も実現できた。反応性の低い不飽和アミド類に対する不斉1,4-付加においても、金属ルイス酸触媒を共存させる事で高い収率で目的物が得られ、キラルナノ粒子触媒との協調触媒作用が見出された。本触媒を当研究室で開発した金ナノ粒子触媒と同時に用いる事で、アルコール類を出発物質に、酸素酸化反応・不飽和結合生成反応・不斉1,4-付加反応をワンポットで連続的に行う系を実現した。また活性の低下を伴わず、触媒の回収、再使用も可能であった。 本反応系において金属の担体からの漏出は検出されず、反応途中の混合物から触媒を濾過後の濾液中で反応が進行しない事も確認した。不均一系ナノ粒子触媒の活性を、対応する均一系錯体触媒と比較した所、低濃度の条件下または特定の基質との反応において、ナノ粒子触媒が錯体触媒を上回る収率を与えた。更に、それぞれの系で配位子の光学純度と生成物の光学純度との相関を調べた所、ナノ粒子触媒系においてのみ、正の非線形効果が観測された。以上の結果は、不均一系ナノ粒子触媒と均一系錯体触媒の活性種が異なるものであることを強く示している。 本研究により、従来の均一系金属錯体触媒を凌駕する、キラルナノ粒子触媒の高い有用性及び反応活性種に関する新しい知見が得られた。
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