研究課題/領域番号 |
12J05995
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
石川 理子 生理学研究所, 生体情報研究系, 特別研究員(PD)
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キーワード | 視覚野 / 知覚学習 / カルシウムイメージング / 視覚反応性 / ラット |
研究概要 |
本研究計画は、成熟脳における、視覚を手掛かりとした学習成立の神経回路メカニズムを明らかにすることを目的とする。 1.ラットにおける視覚刺激を用いた近く学習の効果の検討 研究計画においては、遺伝子改変マウス(Arc-dVenusマウス)を用いる予定だったが、学習速度が速いこと、様々な視覚刺激弁別学習が成立しやすいことから、計画を変更しラットを用いた。これにより、複数の視覚弁別課題で、学習成立の神経メカニズムを解明することが可能となった。異なる視覚刺激を用いた場合、学習による変化が同じ領域で生じるのか、異なる領域で生じるのかを、現在検討中である。 2.ウィルスベクター(AAV)使用による蛍光タンパク質カルシウム指示薬(GCamp)の導入 ラット学習中に経時的に神経活動を観察するために、AAVウィルスを用いGCampを導入し、皮質ニューロンから、長期的カルシウムイメージングを行う第一段階として、AAVウィルスによるGCampを導入した。 3.ウィルスベクター(AAV)使用によるチャネルロドプシンの導入 領野特異的にチャネルロドプシンを発現させるため、AAVを用いチャネルロドプシンを局所的に導入した。これにより、学習中のラットの特定の視覚領野を活動させることが可能となった。より直接的に神経活動と学習効果の因果関係を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画においては、マウスを用いる予定だったが、学習進度がはやいラットを用いるよう変更した。また、視覚刺激として縞刺激やランダムドットモーション刺激を用いることにより、様々な視覚刺激に対して学習効果が観察されることを明らかにした。しかし、これにより、個々の神経細胞の視覚反応性とそれらの細胞の結合様式を直接的に比較するために、あらたに2光子励起顕微鏡によるイメージングを立ち上げる必要が生じた。当該年度は立ち上げに時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
使用動物をマウスからラットへと変更した。これにともない、当初の計画を変更し、2光子励起顕微鏡を用い、学習中の神経活動を経時的に観察し、各神経細胞の視覚反応性を解析する予定である。さらにイメージング領域から切片標本を作製し、個々の神経細胞の視覚反応性を細胞配置から全脳標本におけるイメージング領域と切片標本における細胞をマッチングさせたうえで、複数の神経細胞同士の結合確率及び強度を解析する。この方法により、当初の研究計画より直接的に、個々の神経細胞の視覚反応性と神経回路網の構造を対応させることが可能となり、学習による 神経回路変化のダイナミクスを直接的に明らかにする予定である。
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