研究概要 |
自然免疫において活動するマクロファージでは、表面上のToll様レセプター(TLR)が病原体のセンサーとして病原体関連分子パターンを特異的に認識し病原体を排除することで感染を防御する。 TLR4は病原体センサーとしてグラム陰性菌の外膜成分のリポ多糖(lipopolysaccharide, LPS)を認識する他、近年、ヒアルロン酸オリゴ糖をリガンドとして認識する事が報告されている。 当研究室では、TLR4がコアフコースに修飾されていることを免疫沈降とレクチンブロットにより、更に、TLR4と複合体を作るMD2がN型糖鎖により修飾されることをウエスタンブロットにより確認しており、ヒアルロン酸オリゴ糖やコアフコース修飾などの糖鎖シグナルがマクロファージにおけるTLR4の機能とシグナル伝達に関与する可能性がある。また、N型糖鎖にコアフコースを付加する糖転移酵素であるFut8がマウスにおいて加齢と共に発現が増加することが報告されているなど、糖鎖と老化の関わりが示唆されている。 マウス生体内において、各種リガンド刺激に対するマクロファージのサイトカインの分泌を確認する為に、「マクロファージの欠損マウス」と「マクロファージ欠損マウスへのマクロファージ再移植」の系を立ち上げている。現在、マクロファージの欠損を誘導する試薬であるクロドロン酸の投与により、マウス脾臓中の90%のマクロファージを欠損させる事に成功した。また、クローニングされたTLR4, MD2遺伝子(東京大学からの供与)を用いて、Fut8欠損時においてTLR4を介する各種リガンドのシグナル伝達を調べることを進めている。
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