研究実績の概要 |
Toll様受容体4は自然免疫においてマクロファージや樹状細胞などの細胞表面でMD2と共に複合体を形成し、グラム陰性菌の細胞壁成分リポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)を認識してそのシグナルを細胞内に伝えることが知られている一方、近年では従来の知見を越えて、TLR4は卵細胞を囲む卵丘細胞においてヒアルロン酸の分解物を認識しサイトカインを分泌、受精を可能にするなど [Development.2008 Jun;135 (11):2001-11]ている。TLR4に付加される2ヵ所のN-型糖鎖がTLR4の細胞表面への正常な運搬に必須であり、その欠損はリガンドであるLPSとの結合を妨げることが報告されている。このようにTLR4の新規知見としてTLR4リガンドやTLR4の機能制御に糖鎖が重要な意味を成していることが分かる。そこで、これらの知見から糖鎖が関わる未知のTLR4の機能を理解することを目標とした。特に糖転移酵素α1,6 fucosyltransferase (Fut8) はその欠損マウスが重篤な症状を示し、かつ加齢との関わりが報告されていることから、TLR4を修飾する糖鎖としてFut8が合成するコアフコースに着目した。 結果、コアフコースを欠損した場合、TLR4とその複合体を合成するMD2が細胞表面に正常に発現し、かつ複合体を形成するにも関わらず、LPS刺激時においてそのシグナル伝達が抑制されることが明らかになった。LPS刺激後のTLR4-MD2複合体の動態を経時的にフローサイトメトリーで観察したところ、野生型と比較してFut8を欠損した細胞ではLPS刺激にも関わらずTLR4-MD2複合体が細胞表面上に保持される傾向がみられた。このことから、Fut8を欠損した場合、TLR4-MD2複合体はLPSとの結合が抑制され、結果、正常なLPSシグナル伝達が抑制されることが示唆された。
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