日本全国の実態調査に基づいて住環境と健康の因果構造を明らかとし、生涯健康な社会形成に資する住宅・地域環境の健康影響評価手法を開発することを目的として、住環境と健康に関する多様なサンプルデータを収集するための、①3年の経過を確保した追跡調査、②主観と客観の双方データを収集・測定するフィールド調査、③全国区を対象とした大規模アンケート調査、の3つのアプローチを介して、公衆衛生学的理論と統計的因果推論に基づき研究を遂行した。 本年度は、前年度までに収集した調査データに加え、高知県の中山間部等の実フィールドにおける調査データを集積し分析を重ねることで、前年度までの調査結果の「整合性」「妥当性」「普遍性」「強固性」「関係の非介在性」「時間的先行性」といった因果条件の確認を進めた。特に、開発した評価ツールの検証にあたり、多重ロジスティック回帰分析等の多変量解析によって、地域住民の活動量の実測値との対応を確認し、「冬季の寝室の睡眠快適性」や「冬季の廊下・階段の温熱環境」、「地域の緑地環境」「地域の治安」、「交流人数」、「地域景観」等に代表される、選定評価項目の質が高い住宅・地域ほど強い運動を実施し、健康関連QOLが優れていることを確認した。これらの調査結果は、調査協力を得た地域住民との意見交換やフィードバック等を通して、実生活への実装や生活改善への適応について検討を重ね、居住者の健康維持増進に資する評価手法となるように考慮した。
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