研究概要 |
本研究は、シナリオ分析を統合した選択型実験を用いて,知床地域の住民が野生動物(ヒグマ)に関してどのような将来像を望んでいるか,詳細に解明することを目的としている。 研究初年度である2012年度は,(1)分析手法の習得と(2)既に取得してあるデータの解析,(3)今後の調査のための予備調査に重点をおいた.まず,(1)については,選択型実験とシナリオ分析に関して,環境経済学,野生動物管理学,保全生態学などの分野の雑誌を中心にレビューを行い,情報を収集するとともに,学会への参加を通して,国内外の研究者と手法に関する議論を深めた.続いて,(2)については,2011年度以前に知床半島地域で実施してあるアンケート調査のデータを加工し,詳細な解析を試みた.この解析によって,住民のヒグマおよびヒグマ管理に対する認識は極めて多様であること,その認識の違いには過去のヒグマに関する経験などが影響を与えていることなどが明らかになった.しかし,予定した分の解析を全て終了することは出来なかったため,2013年度にも継続して,詳細な解析を試みる予定である.最後に(3)については,聞き取り調査を住民及び環境省をはじめとする行政機関などに実施した結果,2012年度における知床半島のヒグマ出没は今までと比較して極めて多く,2011年度以前と比べて住民及び関係者の認識が大きく否定的な方向に変化している可能性が示唆された.今後調査を実施する場合には2011年度以前のデータとも比較することが重要かつ有益だと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,シナリオ分析を統合した選択型実験を用いて,知床地域の住民がヒグマに関してどのような将来像を望んでいるか,詳細に解明することを目的とし,2012年度は,(1)分析手法の習得,(2)既に取得してあるデータの解析,(3)今後の調査のための予備調査に重点をおいて研究を実施した.(2)に関して,解析の一部が終了することができていないが,それ以外の点は順調に進んでいるため,(2)おおむね順調に進展している,と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
第一に,2012年度中に終えることのできなかった解析に関して,聞き取り調査の結果も参考に詳細な解析を行い,国際誌に論文を投稿する.また,本研究は2013年度に知床地域の住民を対象としたアンケート調査を計画しているが,社会的な事情からアンケート調査を予定通り実施できない可能性も考えられる.その場合には調査地や対象種に拘らず,野生動物と人との軋轢を事例にして「社会科学的シナリオ分析」を適用することを優先する方向で調整する予定である.
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