本研究では3 年間を通して、シナリオ分析を統合した選択型実験を用いて、野生動物に関して人々がどのような将来像・管理案を望んでいるか、詳細に解明することを試みた。最終年度である平成26 年度は以下のように、データ解析、論文執筆、成果報告に取り組んだ。 まず、知床半島のヒグマ管理に関するシナリオについて、住民及び観光客の選好を定量的に明らかにし、その成果の一部を国際誌であるBiological Conservation で報告した。加えて、生態学的知見を潜在クラスモデルに組み込んで分析を行うことで、ヒグマの生態学的情報および実際の知床でのヒグマ管理が人々の認識にどのような影響を与えているかについても明らかにした。これらの一連の成果は学会発表および論文投稿を行うとともに、知床半島においても報告・議論を行っており、本研究は知床半島の野生動物管理政策に一定の貢献を果たした。 また筆者らは上記に加え、北海道(日本)とアルバータ州(カナダ)において、人々のヒグマ/野生動物に対する認識の違い及び管理への要望について、環境経済学および社会心理学的のアプローチを併用することで詳細に明らかにした。これらの成果はアルバータ大学において、セミナー発表を行った。 最後に、筆者らは奄美大島におけるエコツアー導入に関するシナリオについて、上記と同様に潜在クラスモデルを適用することで、観光客の選好およびその多様性の要因について詳細に明らかにした。本研究の成果は学会発表に加え、奄美大島の関係者に直接報告を行うとともに、メディアを用いて広く一般に報告した。
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