研究課題/領域番号 |
12J06104
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松山 淳 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ケイパビリティアプローチ / 正規・非正規労働 / 最低賃金制度 / 被災地復興 |
研究概要 |
1.ケイパビリティ集合のランク付けならびにケイパビリティアプローチの資源配分理論に関する基礎研究を行った。この研究をもとに、ベンチマークモデルとして、2人経済におけるケイパビリティをベースとする資源配分問題に関するモデルを構築した。本研究では、ケイパビリティの最小格差という概念を定式化する。その上で、財に関するケイパビリティの拡張経路が異なる2人の個人を考え、彼らのケイパビリティの最小格差を与えるような財の配分量を求める。実現された配分は、Sen(1973,1997)により提唱された衡平性の弱公理を満たすことが分かった。 2.正規・非正規労働者間の賃金格差の拡大が経済に与える影響に関する理論的研究を行った。この研究は、佐々木啓明氏(京都大学大学院経済学研究科准教授)、迫一光氏(ノースアジア大学経済学部講師)との共同研究である。正規・非正規労働者を考慮した経済モデルを構築し、正規・非正規労働者の賃金格差の拡大が経済に与える影響について分析を行った。ある条件の下では、正規・非正規労働者の賃金格差の拡大は経済を不安定化させることが分かった。また、最低賃金制の導入が景気循環に与える影響を分析した。最低賃金制度は景気循環の振幅の幅を緩和するという意味で経済を安定化させる効果をもつことが分かった。 3.住民主導の復興活動が被災地における転出行動に与える影響に関する理論的研究を行った。この研究は、荒井壮一氏(東北大学大学院経済学研究科博士研究員)との共同研究である。被災地復興を巡る事例研究では、政府主導ではなく住民主導の復興活動の重要性が指摘される。本研究では、被災地からの人口移転を考慮した、企業と被災地住民および周辺地域住民との共同生産モデルを構築した。政府主導および住民主導の復興支援が、被災地住民の人口に与える影響を分析した。住民主導の復興活動が政府主導の復興活動よりも、被災地住民の人口を増やすには効果的であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の研究計画に基づき、専門論文のサーベイを遂行しベンチマークとなるモデルを構築した点は進展があったが、論文として投稿するまでには至らなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果をもとに、基礎文献の研究から得られた新たな知見を加えて、ケイパビリティ集合のランク付けおよび資源配分理論の研究から得られた帰結を統合することによりモデルを構築し、研究を推進する.
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