研究課題
マメ科植物の根とシュートを介した根粒形成の遠距離制御機構における解析ではミヤコグサCLE-RS2ペプチドが根からシュートへ遠距離移行するかどうかについて検証を行った。毛状根形質転換法を用いてダイズの根にミヤコグサのCLE-RS2ゲノム断片を導入してCLE-RS2を用いて発現させ、その個体のシュートから導管液を採取してMS解析をおこなった。その結果、導管液からは活性型CLE-RS2ペプチドが検出され、根で発現させたCLE-RS2ペプチドはシュートへ遠距離移行することがわかった。この結果を論文にまとめ、Nature Communications誌より論文を発表した。この論文を通して本研究は植物で初めて器官間を遠距離移行する分泌型オリゴペプチドについて報告することができた。また、この成果を海外や国内の学会で発表し、他の研究者と意見交換も行なった。ダイズの導管液を用いた分泌型ペプチド・低分子タンパクの網羅的な解析では、新たにイオン交換カラムを用いた精製ステップを追加することでより大量の導管液の精製・解析を行うことができるようになった。この精製法を用いて約200mLのダイズ導管液の精製・解析を行ったところ、10個の内生の分泌型ペプチドを検出することに成功した。さらにそれらの発現パターンから、根からシュートへ遠距離移行する可能性のあるものとして2つのペプチドに絞り込んだ。これらのペプチドを毛状根形質転換法を用いて根で過剰発現させると、いずれのペプチドもシュートの生育を抑制する効果を示すことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
根粒形成の全身的制御において、CLE・RS2ペプチドが根からシュートへ遠距離移行することを明らかにした論文をNature Communications誌より発表することができた。また、ダイズ導管液の網羅的な解析では、根からシュートへ遠距離移行する可能性のある新規な分泌型ペプチドを2つ見出すことができた。
本研究では今後、根からシュートへ遠距離移行する可能性のある2つの分泌型ペプチドに焦点を絞って解析を行う。まず、この2つのペプチドが実際に根からシュートへ移行することを毛状根形質転換法を用いて検証する。さらにこれらのペプチドの成熟型を明らかにし、それを植物体に添加して応答する遺伝子を調べることによってこれらのペプチドが何のシグナル伝達系に関わるかを調べる。この際には鈴木博士、東山教授(名大)の協力を得てRNAシークエンスを行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Nature communications
巻: 4 ページ: 2191
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Plant Cell and Physiology
巻: 54 ページ: 443-447
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http://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2013/08/12.html