本研究では多様な分泌型ペプチドが根から地上部へ長距離シグナル伝達を行う可能性を考え、それを検証するためにダイズ導管液中に含まれるオリゴペプチドの探索を行うことにした。昨年度までに得られた実験結果から、申請者はダイズ導管液から7個の内生の分泌型オリゴペプチドを同定することに成功した。平成26年度は、まずこれらのペプチドをコードする遺伝子の発現部位を明らかにするために、ダイズの組織別発現解析を行った。その結果、これらのペプチド遺伝子は根のみならず、第1節間(導管液を採取する部位)などでも発現していることがわかった。次にこれらのペプチドが実際に根から地上部へ長距離移行するかどうかを検証した。その際には上記の7つのペプチドのうち硫酸化修飾を持つペプチド2個、CLEペプチド、CEPペプチドの4つのペプチドに着目して行った。成熟型ペプチドとなる部分の塩基配列に非同義置換を入れたペプチド遺伝子のゲノム断片をそれぞれ作成し、毛状根形質転換法を用いてこのゲノム断片をダイズの毛状根に導入した。これらのゲノム断片を導入した毛状根形質転換ダイズから導管液を採取し、MS解析を行ったところ、非同義置換に由来するオリゴペプチドが検出された。この結果は少なくとも上記の4つのペプチドは根から地上部へ長距離移行することを示している。さらに申請者はこれらの4つの長距離移行性ペプチドの根における発現部位をプロモーターGUSを用いて解析した。その結果、これらの4つのペプチド遺伝子のプロモーター活性は内鞘の内側で検出された。申請者はこれらの結果を基に論文を執筆し、現在それをThe Plant Journal誌に投稿している。また本研究を通じて植物における長距離シグナル伝達について得た知見を総説にまとめ、Frontiers in plant scienceから発表した。
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