研究課題/領域番号 |
12J06140
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
甲田 優太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | リビングラジカル重合 / 親水性 / 星型ポリマー / ミクロゲル / フルオラス性 / 分子捕捉 / 折り畳み構造 / 生体適合性 |
研究概要 |
(1)親水性フッ素集積ミクロゲル核星型ポリマーの合成と多置換フッ素化合物の水中捕捉・分離 平成25年度(二年目)は、親水性フッ素集積ミクロゲル核星型ポリマーを合成し、これを用いて水中における多置換フッ素化合物・界面活性剤の認識・捕捉、及び水中からの除去・分離を検討した。 星型ポリマーの合成ルテニウム錯体によるリビングラジカル重合を用いて、フッ素多置換モノマー存在下、ポリエチレングリコール(PEG)型マクロ開始剤を架橋し、親水性PEG枝を持っフッ素集積ミクロゲル星型ポリマーを合成した。光散乱やフッ素核磁気共鳴法により、本星型ポリマー(分子量 : XX ; 枝数 : XX)は、多数のフッ素原子を核に集積化していることがわかった(核内フッ素原子数 : XX個)。 多置換フッ素化合物の水中分子捕捉・分離 親水性フッ素集積ミクロゲル星型ポリマーを用い、水中にてパーフルオロオクタン酸(PFOA)に代表される多置換フッ素界面活性剤の捕捉を検討した。実際、この星型ポリマーは、PFOA(-10ppm)を効率的に核に捕捉し、その星型ポリマーを直接透析で除去すると、水からPFOAを98%以上除去できた(LC-MSIMSにより決定)。また、この星型ポリマーは、有機溶媒(クロロホルム)で処理すると捕捉していたPFOAを放出し、再利用の可能性が見出された。 (2)親水・フルオラス性ランダムコポリマーの合成と生体適合性の評価 ポリエチレングリコールメタクリレートとフッ素多置換アルカン側鎖メタクリレートをリビングラジカル重合し、親水性かつフルオラス性のランダムコポリマーを合成した。本ポリマーは、フッ素側鎖を持つにも関わらず、マウス繊維芽細胞および正常ヒト膀帯静脈内皮細胞に対して毒性を示さず(細胞生存率 : 99%以上)、生体適合性を持っことが分かった。さらに、本ポリマーへのタンパク質コンジュゲーション(結合)にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究過程では、親水性フッ素集積ミクロゲル核星型ポリマーを用いることにより、これまで困難であった水中の多置換フッ素界面活性剤の効率的かつ選択的な捕捉・分離、刺激応答放出に成功した。本成果は産業的にも非常に有用な知見であり、特許を出願するまでに至った。さらに、親水・フルオラス性ランダムコポリマーの合成、及びその生体適合性評価やタンパク質とのコンジュゲージョンにも成功し、当初の計画以上の成果を得たと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度(3年目)は、これまでの知見を基に以下の研究を遂行予定である。 フッ素集積星型ポリマーを用いた精密マクロゲルの合成と機能 フッ素集積星型ポリマーの核内に残存しているオレフィンを反応点(架橋点)として用いたフリーラジカル重合により、星型ポリマーの同士を連結したマクロゲルを合成する。これは、星型ポリマーのミクロゲルが階層的に結合した新たなマクロゲルとして大変興味深い。本ゲルを用いて水中の多置換フッ素界面活性剤の回収、およびマクロゲルのリサイクル利用を検討する。 親水・フルオラス性ランダムコポリマ―の合成とタンパク質の安定化 リビングラジカル重合により、親水・フルオラス性ランダムコポリマーを各種合成し、本ポリマーによるタンパク質の安定化能を検証するとともに、有機溶媒中での酵素反応への展開を目指す。
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