研究概要 |
昨年度コルシカ大学のFilippi博士と共同開発した流れ藻輸送シミュレーションモデルを改良し, このモテルにIsobe et al. (2009)が開発したTwo-Way Particle Tracking Modelという海洋漂流物の起源推定手法を組み込んだ数値実験により, 2008年から2010年の海底トロール調査で深海から採集したアカモクの起源の位置を推定した. 具体的には, このモデルを用い, まずアカモク流れ藻の堆積点の座標を始点として時間を遡る粒子追跡シミュレーションを行うことで起源となる沿岸の候補を求め, 次にその起源の候補から放流した粒子を時系列に沿って追跡し, もとの堆積点まで辿り着いた場合にその候補をアカモク流れ藻の起源とした. その結果, 東北海域で採集されたアカモクの起源は, いずれも本州太平洋岸の北緯35度から41度の間で, その浮遊期間は2ヶ月以内であることが示された. 新潟大学の上井進也准教授が構築した日本沿岸のアカモクのミトコンドリアCox3遺伝子配列の地理的差異データベースをもとに, 海底トロール調査で深海から採集されたアカモクのうち新鮮なものについて東京大学大気海洋研究所のアタチャイ・カンタチュンポー博士と共同で遺伝子解析を行い, アカモクサンプルのミトコンドリアゲノム上にあるcox3遺伝子(469bp)およびtRNA遺伝子群(396bp)の計2領域865bpの塩基配列マーカーの抽出を試みた. その結果, 2010年に採集された最も新鮮な冷凍サンプルの塩基配列マーカーの抽出に成功した, 今後, 蓄積された2008年から2010年までの全てのアカモクの冷凍サンプルについて遺伝子解析を行い, 地域ごとの遺伝子配列の地理的差異データベースから東北海域における堆積アカモクの地理的起源の一部を推定し, シミュレーションで得た起源の推定結果の妥当性を検証する.
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