研究課題
地球などの惑星内部では鉄炭化物の形成が予想されている。鉄炭化物の一つとして、常温常圧から安足であるFe_3Cがあり、地球内核の構成物の一つとして存在が予想されている。しかし、現在報告されているFe_3Cの安定性について高温条件下での研究例は70万気圧までと限られており、地球内核条件での報告はまだない。また、Fe_3Cの存在条件はFe-C二成分系におけるC量によっても決定される。Fe-C系の相平衡図は70万気圧まで報告されているが化学分析によつて直接C量を測定し報告は15万気圧までと低圧力条件においてのみである。Fe_3Cの相関係および融解関係を解明するため、放射光施設SPring-8で高温高圧その場X線回折実験を行った。その結果、343万気圧までの条件においてFe_3Cが安定であることを明らかにした。また、Fe_3CはFe_7C_3と液相へ不一致溶融することが報告されているが、X線回折パターンの消失による融解判定法からFe_3Cの不一致溶融点を200万気圧までの条件で決定した。地球外核と内核の境界におけるFe_3Cの不一致溶融点は5200Kと見積もられた。また60万気圧、2800Kの条件からの回収試料の化学分析を行った結果、Fe_3Cが不一致融解した時に生成されるFe_7C_3と共存する液相の中のC量は4.7wt.%と決定された。この値は先行研究による15万気圧での結果に比べ、液相中のC量が減少している。これらのことから圧力増加によってFe_7C_3と共存する液相の中のC量は減少し、さらにFe-Fe_3Cの共融点組成の炭素量も減少しFe_3Cの存在領域も拡大すると予想される。地球内核の結晶化過程が現在の地球核の温度条件より高温から開始したと仮定すると、初めにFe_7C_3が結晶化し、続いてFe_3C、Fe+Fe_3Cと結晶化することが予想される。Fe-C系を考えた場合、地球内核はそれらの炭化物が層構造をなしており、近年報告されている内核中の最内核構造や異方性がこの分別結晶作用によって説明できる可能性がある。今後、Fe-Si-Cなどの多成分系の融解実験を行い、地球中心部での炭素の存在様式について明らかにする予定である。
3: やや遅れている
Fe_3Cの安定性と融解実験に時間を割いてしまい、予定のFe-Si-C系の融解実験・Fe-CO_2系の相平衡実験に着手することが遅れている。しかし、地球中心核の300万気圧以上の超高圧発生技術は取得したので、今後多成分系の実験を素早く進めたい。
現在、国内でダイヤモンドアンビルセルへのCO_2の気体封入は困難であることが分かった。Fe-CO_2系の相平衡実験にはCO_2の発生元としてMgCO_3のような炭酸塩を用いる必要がある。すでにMgCO_3は取得しているので、素早くFe-CO_2系の実験に着手したい。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)
American Mineralogist
巻: 99 ページ: 98-101
10.2138/am.2014.4463
Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: 228 ページ: 114-126
10.1016/j.pepi.2013.12.010
Physics and Chemistry of Minerals
巻: 40 ページ: 647-657
10.1007/s00269-013-0600-x