研究課題/領域番号 |
12J06250
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
羽成 泰貴 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | エングレリン / カルボニルイリド / 1,3-双極付加環化 / 触媒的不斉合成 |
研究概要 |
本研究は、キラルなRh (II)錯体を用いたカルボニルイリドの逆電子要請型不斉1,3-双極付加環化反応を機軸とした生物活性含酸素多環式天然物およびその類縁体の触媒的不斉全合成を目的とし、標的化合物として特に強力な抗がん活性を示す(-)-エングレリンAを設定した。これまでに、α-ジアゾ-β-ケトエステルとをカルボニルイリド前駆体、エチルビニルエーテルを求双極子剤とする不斉1,3-双極付加環化反応を鍵工程とし、(-)-エングレリンAの触媒的不斉全合成を達成した。しかし合成終盤で行われるアシル化の位置選択性が乏しかったことから、より効率的な合成を目指して合成経路の改良を行った。立体選択的水素化により得られた三環性アルコールのC6位水酸基をTES基で保護した後、C9位エトキシ基をルテニウム酸化によるアセトキシ基への変換、アセチル基の除去およびアシル化を経てC9位にアシル基を導入し、続くC6位TES基の除去とアシル化を行う事でエングレリンAへと導いた。これによりエングレリン類のもつC6位およびC9位アシル基の誘導化を効率的に行うための合成経路を確立した。また、共役エノンに体する1,4-付加によりC4位アルキル基を導入すべく、C4位メチル基を持たない三環性共役エノンの調製を行い、アルキル化を試みた。Me2CuLiを用いたアルキル化を行ったところ、望みとするエキソ面側からアルキル基が導入されるものの、続くプロトン化もエキソ面側から進行し、C5位立体配置が望みとは逆となることが分かった。しかしこれによりC5位立体化学が天然物とは異なる誘導体が合成可能と考え、新たな標的分子の一つとして設定することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エングレリン類のC6位およびC9位アシル側鎖誘導体合成のための合成経路を確立したたこと、および目的の一つであるエングレリンAの誘導体合成が順調に進行していることから、研究は概ね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
イソプロピル以外の置換基をもつα-ジアゾ-β-ケトエステルの不斉1,3-双極付加環化反応および各種有機銅反応剤を用いた共役エノンへの立体選択的1,4-付加反応を機軸として、天然物からの誘導が困難な4位や7位に種々の置換基を組み込んだエングレリン類縁化合物の合成を行う。また、エングレリン類のもつ五員環部を六員環へと変換した誘導体の合成を行う。
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