研究課題/領域番号 |
12J06284
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
畑中 大路 九州大学, 大学院人間環境学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 学校組織 / ミドルリーダー / アイディア実現 / 事例研究 / M-GTA / 学校経営過程 |
研究概要 |
(1)研究内容 昨年度に引き続き「ミドルリーダー育成」を視野に入れ、下記二つの側面から研究を行った。 一つ目は、ミドルリーダーによるアイディア実現事例の分析である。昨年度学会発表を行った二事例の追加調査及び再分析を行い、投稿論文としてまとめた。その結果、学校組織におけるアイディア実現プロセスの概要とともに、学校組織におけるミドルリーダーは、学校組織において生じた課題の内容に応じてその主体が変化する流動的な存在であることが明らかとなった。 二つ目は、学校経営研究の方法論検討である。具体的には、従来の学校経営研究で用いられてきたエスノグラフィ等の質的研究方法と、新たな研究方法としてのM-GTAを比較し、その特徴を考察した。その結果、事象の動き(プロセス)を分析対象とするM-GTAは、学校経営の説明と予測を可能とする理論生成が可能であるという特徴をもつ一方で、組織文化といった個々の学校の固有性は捨象せざるをえず、エスノグラフィ等の研究により補完することで、より説明力のある理論が生成される可能性を提示した。 (2)研究成果 ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスに関して、「学校組織におけるナレッジマネジメント―校内授業研究を通じた知識創造プロセスに着目して―」(『九州教育経営学会研究紀要』第19号、2013年6月、pp. 83-91)、及び「学校組織におけるミドル・アップダウン・マネジメントの実際―運動会の運営をめぐる意思形成過程の検討―」(『九州教育学会研究紀要』第40巻、2013年9月、pp. 65-72)等で言及した。また、本研究課題採用期間に行った研究成果等を整理し、博士論文を執筆した(『学校経営過程研究における方法論の考察―ミドル・アップダウン・マネジメントを視座としたM-GTAによる分析―』博士学位論文(教育学)、授与大学 : 九州大学(人環博甲第317号)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究最終年度である本年度は、昨年度の分析結果を踏まえ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの検証を行った。また同時に、学校経営研究を行ううえでの研究方法論も検討した。これは申請時の研究目的に沿うものであり、研究計画は順調に進展したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
課題採用期間を通じ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの概要と、その分析に適する方法論の検討を行うことができた。本研究の知見は、従来ブラックボックスであったミドルリーダー研究及び学校経営プロセス解明の糸口になる可能性をもつ。 しかし、本研究はミドルリーダー研究の大枠を示すにとどまり、今後も継続した分析が求められる。例えば、学校規模や職位等がミドルリーダーのアイディア実現に与える影響の有無を検討し、分析結果の精緻化・一般化を図っていきたい。
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