研究概要 |
1.発症後早期の虚血性心疾患患者(心筋梗塞後患者)18名および年齢等をマッチングした心疾患を持たない成人18名を対象として,自転車エルゴメーターを用いた心肺運動負荷試験を実施した。近赤外分光法装置を外側広筋に装着し,運動強度の増大に伴う筋酸素動態を比較した。その結果,心疾患を持たない成人においては,酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)・筋酸素飽和度(SmO_2)が減少し,脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy-Hb)が増大した。一方で虚血性心疾患患者においては,Oxy-Hbが増大し,SmO_2およびDeoxy-Hbは有意な変化を示さなかった。総ヘモグロビンは心疾患患者および心疾患を持たない成人において同様に増大した。安静時から最大運動時までの筋酸素飽和度の変化量(ΔSmO_2)は最大酸素摂取量と有意な相関関係を示した。以上の結果は,発症後早期の虚血性心疾患患者においては,酸素供給能に比較して酸素利用能が低下しており,酸素利用能が最大酸素摂取量と関連する可能性を示唆している。 2.虚血性心疾患患者(心筋梗塞後患者)15名を対象として,12週間の持久性自転車運動トレーニングを実施した。運動トレーニング前後で心肺運動負荷試験を実施し,運動トレーニングにより運動強度の増大に伴う筋酸素動態が変化するか否かを検討した。中間解析の結果,運動トレーニングによりDeoxy-Hbの増大およびSmO_2の減少が認められた。総ヘモグロビン動態は運動トレーニング前後で変化しなかった。運動トレーニングによる最大酸素摂取量の改善は運動トレーニングによるΔSmO_2の変化量と有意な相関関係を示した。以上の中間解析の結果は,運動トレーニングにより虚血性心疾患患者の酸素利用能が改善し,酸素利用能の改善が最大酸素摂取量を改善させる可能性を示唆している。H25年度においても継続して対象数を増大させ,最終的な解析を実施する。
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