研究課題/領域番号 |
12J06306
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 秋 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 重力 / 植物 / 屈性 |
研究概要 |
本研究の目的はシロイヌナズナ花茎の重力感知に関与する遺伝子AtLAZY1とARG1の機能を解明し重力感知機構を明らかにする事である。平成24年度では以下の実験を行った。 1.AtLAZY1とARG1のタンパク質相互作用解析 AtLAZY1とARG1についてそれぞれプルダウン法、共免疫沈降法を用いて植物のタンパク質抽出液から相互作用因子を単離し、これを北海道大学低温科学研究所笠原康裕准教授に依頼し、質量分析計(ESI-LC-MS/MS)によりタンパク質名を特定した。その結果、色素体外膜に存在するTOC75-IIIタンパク質がAtLAZY1とARG1に共通する相互作用因子として同定した。TOC75-IIIはStanga(2009)らにより重力感知に関与している事が示されており、TOC75-IIIと原形質膜に局在するAtLAZY1及びARGIが相互作用することが重力シグナルを生じさせると考えられた。この相互作用を確認するために二分子蛍光相補(BiFC)法及び酵母ツーハイブリッド法を行ったが、タンパク質の性質によりこれらの実験系においてTOC75-IIIを用いる事ができないことが分かった。 2.at lazyl変異体の抑圧変異体dsl1の単離と解析 アクチベーションタギング法を用いたスクリーニングによりatlazy1の表現型が回復する変異体dsl1を単離した。dsl1では転写因子ASL5が過剰発現していた。マイクロアレイ解析により、dsl1では二次細胞壁合成に関与する遺伝子の発現が顕著に増加しており、花茎での二次細胞壁合成の促進がatlazy1の欠損を抑圧したと考えられた。これは二次細胞壁合成が重力屈性にに関与していることが示唆された最初の例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相互作用解析については現段階で可能な実験は全て行い、更なる追求のためには新たな方法を考える必要がある段階まで進捗したので他のデータと合わせて論文を執筆中である。抑圧変異体の解析は当初予定していたよりも素早く実験が進展しており、現在可能な実験は全て終了し、次の実験を模索中である。これらを考慮すると研究はおおむね順調に進展しているが、ある程度の困難にも遭遇しているため「2」とした。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質相互作用解析についてはTOC75-IIIは生化学的に解析する事が困難であることが分かったので、遺伝学的な解析を行う事を考えている。既報(Stanga et al., 2009)の重力屈性が以上なTOC75-IIIの変異を用いて atlazy1及びarg1変異との関連を調べる予定である。 抑圧変異体は二次細胞壁合成と重力屈性の関連を薬剤処理や変異体解析により詳細に調べていく。現段階では相関があることが示唆されている段階なので、二次細胞壁で可能性も考慮し、dsl1で発現上昇している遺伝子に関して、抑圧の原因と思われる遺伝子を探索していく。
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