研究課題
まず、化合物の活性評価及び機能評価に用いるため、NK3受容体、及び蛍光タンパク質(Venus)融合NK3受容体を安定発現するCHO細胞を作製した。得られたNK3受容体発現細胞株が放射活性リガンドを用いた競合阻害実験による受容体結合活性評価、及び細胞内カルシウム濃度変化の定量によるアゴニスト活性評価に利用できることを確認した。また、Venus融合NK3受容体発現細胞株がリガンド刺激による受容体の内在化の評価に利用できることを確認した。一方、E3タグ融合NK3受容体発現細胞株の構築も試みたが、K4ペプチドによる特異的標識が認められなかったため、本細胞株の利用を断念した。続いて、化合物の受容体選択性を評価するため、NK1受容体及びNK2受容体を安定発現するCHO細胞を作製し、得られた細胞株が各受容体に対する結合活性評価に利用できることを放射活性リガンドを用いた競合阻害実験により確認した。次に、新規高活性NK3受容体選択的アゴニスト分子、及びNK3受容体選択的プローブ分子を設計するために、天然に存在するタキキニン類の構造活性相関研究を行った。その結果、NKBの5残基目に酸性アミノ酸を、7残基目にN-メチルフェニルアラニン(MePhe)をそれぞれ配置した場合に、NK3受容体に対して高い受容体選択性を示すことを明らかにした。得られた知見をもとに、既知NK3受容体アゴニストペプチドである[MePhe7]-NKBの誘導体を設計・合成し、その活性を評価したところ、[MePhe7]-NKBよりも高い生物活性、及び受容体選択性を示す新規NK3受容体選択的アゴニストペプチドを見出した。
2: おおむね順調に進展している
タキキニン類の構造活性相関研究を展開することで、新規高活性NK3受容体選択的アゴニスト分子、及びNK3受容体選択的プローブ分子の設計のための有用な構造活性相関情報を得た。また、本研究を通じて、既知のNK3受容体アゴニストペプチドである[MePhe7]-NKBよりも高い生物活性、及び受容体選択性を示す新規NK3受容体選択的アゴニストが得られた。
平成24年度の研究により、NK3受容体に対する生物活性及び受容体選択性の発現に関する有用な構造活性相関情報を得たことから、今後は新規高活性NK3受容体選択的アゴニスト分子の開発に取り組む予定である。また、NK3受容体アゴニスト分子の生体内安定性を評価し生体内で分解を受ける部位を同定し、得られた情報に基づいてより生体安定性の高いNK3受容体アゴニスト分子の開発を行うとともに、本研究結果をNK3受容体プローブ分子の開発に応用する。また、GnRH分泌調節に関与する受容体に対する光アフィニティープローブを開発し、目的受容体の生体内分布の解明に取り組む。さらに開発したプローブと受容体との相互作用部位の同定を試み、得られた結果を新規リガンド分子の開発へと応用することも視野に入れている。
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