これまでの研究により、加齢したマウスにおいて、毛周期の進行にともない毛包幹細胞が枯渇し、結果として脱毛することを明らかにしていた。加齢(ゲノム損傷)に伴い、皮膚にどのような組織学的な変化が見られるのか解析したところ、毛包幹細胞自身がK1などの表皮角化細胞の分化マーカーを発現し、毛包幹細胞が表皮分化している事が明らかとなった。さらに、若齢マウスと加齢マウスから毛包幹細胞をセルソーターにより回収し定量PCRを行ったところ、c-mycやNotch1など、表皮角化細胞の分化に関わる遺伝子の発現変化を見出だした。c-mycはWntシグナルのターゲット遺伝子である事から、Wntシグナルに着目したところ、実際にWntシグナルが加齢したマウスの毛包幹細胞で亢進している事も明らかとなった。加えて、Wntシグナルが亢進しているマウスにおいて、毛包幹細胞が表皮角化細胞の分化マーカーを強く発現している事を見出だし、毛包幹細胞の加齢とWntシグナルとの関連性が明らかとなった。 加齢やゲノム損傷に伴う毛包幹細胞の変化を分子レベルで解明すべく、毛包幹細胞における遺伝子の発現変化にも着目し、網羅的な遺伝子発現解析を実施した。若齢マウスと加齢マウスから毛包幹細胞をセルソーターにより純化しマイクロアレイ解析を行った。加齢マウスから純化した毛包幹細胞の遺伝子発現プロファイルが、若齢マウスから純化した毛包幹細胞の遺伝子発現プロファイルに比べ、表皮角化細胞の遺伝子発現プロファイルに近づいている事が明らかとなった。
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