研究概要 |
土木建築分野や文化財保護で利用されているパルス投射型Time-of-Flight式レーザスキャナは,実物体の3次元形状を高精度に計測できる反面,見え(テクスチャ)の情報は取得できない.一方,このセンサでは通常,距離計測の副産物としてレーザ光の反射強度画像(リフレクタンス画像)が得られる.そこで本研究では,レーザスキャナ単体では不可能と考えられていた物体の見えを獲得あるいは推定する以下の2つの手法を開発する. 【研究目的1.カラー画像とリフレクタンス画像の共起性に着目した3次元モデルの自動彩色】 一般的なレーザスキャナは色情報を直接計測することができない.このため,従来は対象物をデジタルカメラ等で撮影し,得られた多数枚のカラー画像を3次元モデルに張り付けることで色付けを行っていた.これに対し,本研究ではカラー画像とリフレクタンス画像の局所領域の共起性に基づき,リフレクタンス画像を直接カラリゼーションすることで表面色を推定し,3次元モデルの自動彩色を実現する.本年度は,まず彩色の自動化において必要となるカラー画像とリフレクタンス画像のロバストなマッチング手法の開発を行った.また,リフレクタンス情報および距離情報の双方を用いた,リフレクタンス画像のための新たな彩色手法を開発した. 【研究目的2.リフレクタンス画像を用いた物体認識および意味抽出手法】 レーザスキャナから得られるリフレクタンス画像には,カメラ画像と同様の詳細なテクスチャ情報が含まれる,そこでレーザスキャナから通常得られる形状情報のみならず,見え情報も用いた新たな物体認識および意味抽出手法を開発する.本年度では,リフレクタンス情報に基づく交通量調査のための移動体識別手法を構築した.従来のレーザスキャナから得られる形状情報に基づく識別手法に対し,本研究ではリフレクタンス情報を付加することで,形状の類似した移動体間においても高精度な識別を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的1については,カラー画像とリフレクタンス画像の対応の決定方法,およびリフレクタンス画像のカラリゼーション手法の開発を行い,実験によりその有効性を確認している.これらの成果を既に複数の国内学会で発表しており,2013年5月には主要な国際学会(ICRA2013)にて発表予定である,また,研究目的2についても,交通量調査のための移動体識別手法を開発しており,2013年5月に国際学会(QCAV2013)にて発表予定である.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的1については,査読結果や学会発表において,提案手法による3次元幾何モデルの彩色結果とテクスチャマッピング適用結果との比較の必要性が指摘されている.従って,今後は高解像度なリフレクタンス画像に提案手法を適用し,写実性の観点からテクスチャマッピングとの比較を行う予定である.研究目的2については,移動体識別手法を拡張し,リフレクタンス画像を用いた3次元点群の意味付け手法(セマンティックラベリング)を開発する予定である.
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