研究課題/領域番号 |
12J06439
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
下田 宙 山口大学, 大学院・連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 日本脳炎ウイルス / 疫学調査 / 越冬機序 / 野生動物 |
研究概要 |
日本脳炎ウイルス(JEV)は主に豚と蚊の間で増殖するが、蚊のいない11月から翌年6月の問の越冬機序は明確には分かっていない。そこでJEVの越冬機序を解明することを目的として今年度は様々な野生動物におけるJEVの動態を調査した。 山口県下関市においてシカおよびイノシシ、和歌山県田辺市およびフィリピンのミンダナオ島においてコウモリのサンプリングを行った。これらのサンプルを用いてJEVに対する抗体およびウイルス分離および遺伝子の検出を試みた。田辺市およびフィリピンのコウモリの血清を用いてJEVに対する抗体保有状況の調査を実施したところ、田辺市では87%(52頭中45頭)、フィリピンでは25%(319頭中80頭)のコウモリが抗体陽性と判定された。以上のことより、和歌山県やフィリピンのコウモリはJEVもしくは近縁なフラビウイルスに感染していることが示された。また、下関市のイノシシ(51頭)や田辺市のコウモリ(52頭)の血清またはPBMCからウイルス分離、さらにはフィリピンのコウモリ(71頭)および下関市のイノシシ(46頭)の肝臓からフラビウイルスの分離および遺伝子検出を試みたが、現在までに陽性例はない。 また、JEV(JEV/sw/Chiba/88/2002:遺伝子型1)に対する単クローナル抗体の作製、およびその性状解析を実施した。計18個の単クローナル抗体の作製に成功し、そのうち調べたすべてのフラビウイルス属のウイルスと交差反応性を示すもの(5個)、日本脳炎ウイルス血清群(1個)または日本脳炎ウイルス(2個)に対して特異的なものがあった。これらの特異性の異なる抗体を利用して、各種動物からの抗体およびウイルス検出系の確立を試みている。抗原検出系では現在2.75x10^6PFU/mlまで検出できる系が確立できたが、実用には感度の向上が必要であると考えている。抗体検出系は二次抗体を必要とせず、様々な動物種に適用できるブロッキングELISAの系の確立を目指しており、犬では有用であることが示された。今後は様々な動物に適応可能か検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本脳炎ウイルスに対するモノクローナル抗体を作製し、その性状解析を実施した。それを応用し、抗体および抗原の検出系の確立に取り組んでいる。また、平成25年度に実施予定であった野生動物のサンプリングを今年度から実施しており、当初の予定より多くのサンプルを採取することができると考えられる。以上のことより、現在当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
日本脳炎ウイルスの増幅動物の可能性が示唆されているイノシシやコウモリを中心とした野生動物のサンプリングを継続し、それらのサンプルを用いて日本脳炎ウイルスに対する抗体の検出、ウイルス分離、遺伝子検出を実施していく。また、単クローナル抗体を用いた簡便かつ高感度にウイルスを検出・識別できる系や様々な動物に適用できる簡便な抗体検出系を確立し、イノシシやコウモリを中心とした様々な動物における日本脳炎ウイルスの生態を明らかにしていく。
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