研究課題/領域番号 |
12J06465
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
雪浦 弘志 東北大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | リゾボスファチジン酸 / HUVEC / Tip cell / Stalk cell / 血管形成 |
研究概要 |
新生する血管には性質の異なる2種類の内皮細胞が存在することが報告されている。伸長血管の先端に位置する内皮細胞(Tip cell)とTip cellを追随する内皮細胞(Stalk cell)である。Tip cellは糸状仮足を伸ばしてVEGFなどの血管新生因子を探索し、血管が伸長する方向を決定する。Tip cellは活発に動くために細胞間接着が弱まっており、Stalk cellは血管を安定化するために強固な接着をしていることがわかっている。 これまでの解析から、LPAシグナルはTip cellには作用するが、Stalk cellにはあまり作用しないことが示唆されていた。そのメカニズムを解析するためにHUVEC(正常ヒト臍帯静脈内皮細胞)を用いて解析を行った。 まずHUVECをコンフルエントまで培養し、チップを用いてScratchし、細胞のシートに傷をつけた。こうすることで一部の細胞は非接着部位を持つことになり、接着している細胞(stalk cell様)と接着面が一部ない細胞(Tip cell様)を作り出すことができる。この状態でLPA刺激をすると、接着面が一部ない細胞(Tip cell様)の特に非接着面でのみアクチンストレスファイバー形成が生じた。詳細に解析した結果、この現象は細胞膜タンパクでありLPA分解酵素であるLPP3の局在によって制御されていることがわかった。この結果からLPAがTip cellでのみ作用していたメカニズムを一部説明することができたと考えている。 次に時期特異的にATXをKOし、詳細な血管形成を観察可能な新生仔網膜血管を単離し、解析を行った。その結果、ATXをKOするとTip cellの数が減少し、血管伸長が抑制にされた。マウスを用いた解析からもLPAがTip cellの挙動に重要な影響を与えていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト内皮細胞を用いた解析から、LPAは一つの細胞でも作用する部位が異なっていることがわかった。LPAは細胞接着面ではほとんど作用がなく、細胞非接着面でのみ作用を発揮するが、これはLPA分解酵素であるLPP3の局在に制御されていることが明らかとなった。上記したように新たに血管形成におけるLPAシグナルの役割が明らかになっていることから、本年度の研究結果については期待通り研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにLPAの血管形成における詳細な機能がわかりつつある。今後はこのLPAシグナルと他の血管形成因子との関連を探っていく予定である。LPA産生酵素, LPA受容体, LPA分解酵素がどういった因子により発現誘導・発現抑制が制御されているのか調べる。
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