研究概要 |
平成24年度に合成法を最適化し、プロトン容量最大となった硫酸基導入炭素について、燃料電池への適用を検討した。 Norit SXIIを発煙硫酸中で353Kに加熱して得たHSO_3-C (0.49mmol g^<-1>)を用いてモデルMEAを作製し、インピーダンス測定を行った。Bode線図によって周波数依存性を見たところ、HSO_3-CはNorit SXIIと異なる傾向を示し、10^<-2>Hzで2.4x10^3ΩとNorit SXIIの1/6のプロトン伝導抵抗を示した。 また、市販Pt/C触媒(田中貴金属製, TEC10E50E-HT)とHSO_3-Cまたは高分子プロトン伝導体(Nafion)を混合したものをカソードに用いてMEAを作製し、発電試験を行った。カソード層にプロトン伝導体を持たないMEAでは電圧が上下した。それに対し、カソード層にHSO_3-Cを用いたMEAでは安定した電圧が得られた。前者では反応に必要なプロトン供給が不十分であったのに対し、後者ではそれが改善したためだと考えられる。しかし、カソード層にNafionを用いたMEAと比較すると、過電圧による電圧損失が0.16Vほど大きくなった。カソード層にHSO_3-CとNafionを共用したMEAでは、この過電圧増加は見られず、最大の出力を得た(0.9V, 4.9mAcm^<-2>)。ポリマーを増加すれば、有効白金表面積の低下等の問題があるが、HSO_3-Cを用いることで、有効白金表面積の低下なしにプロトン伝導度を向上させることが可能になった。加えて、詳細に比較するため、15-30mAcm^<-2>の領域でフィットした外挿直線の傾きを電子・プロトン伝導抵抗等の電流量に依存する電圧損失の指標、V軸切片を活性化過電圧等の電流量に依存しない電圧損失の指標とした。HSO_3-CまたはNafionを用いたMEAでは、傾きが-2.1―-2.7VmA^<-1>cm^2と同程度であったのに対し、HSO_3-Cのみをプロトン伝導体として用いたMEAではV軸切片が0.69Vと他のMEAよりも0.16V小さな値となった。これは、CF_2骨格を持つNafionの方が高いプロトン放出能を持つためだと予想している。このことから、炭素の硫酸基にCF_2骨格を導入することで、Nafion不要化の可能性もある。 なお、これらの成果は論文にまとめJournal of Power Source誌にて報告している。
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