RNA干渉の生化学的応用は広く試みられ、国内外で顕著な成果が上がっている。細胞に低毒性である食用成分をベースとした新規遺伝子導入試薬を用いることにより、RNA干渉のミツバチ細胞などにおけるウイルス感染症への農学的応用を目指した。特定のがん遺伝子(c-mycなど)が導入されたミツバチ初代培養細胞は継代培養炉可能となり、この点に関して、RNA干渉などの生物への応用について総説論文を発表している。遺伝子導入効率上昇を目指す細胞膜変化の解析を行った。カベオラは細胞が物質を取り込む場であり、カベオラの構成分子であるカベオリンの解析は、本研究のような遺伝子導入技術革新のためには欠かせない。細胞膜のくぼみ構造下で、リガンドレセプターの相互作用と情報伝達が3次元的にどのように行われるかを検討するため、カベオリンやSrcがん遺伝子に特異的な抗体を用い、免疫沈降や蛍光細胞染色によって局在を確認すると共に、成長因子やインスリンそしてカルシウム負荷における変化を追跡した。またDNAカセット添加後RNA干渉が誘導される際に細胞のカベオラ構造やカベオリン局在にどの様な変化を生じさせるのかを共焦点レーザー顕微鏡を用いて調べた。樹立したミツバチ細胞は公表済であるが、ゲノムPCR解析からこの継代培養細胞は確かにミツバチ由来であると同時にIAPV感染は陰性であることも確認されたので、以後の研究に十分活用できると考えられた。 新規遺伝子導入試薬の開発にも深く関与したが、これは従来のものと同等以上の遺伝子導入効率が認められる上、コストは極めて低い画期的な導入試薬である。一般的に困難とされている浮遊細胞への遺伝子導入も成功し、ヒトB細胞由来のDaudi細胞でGFP発現細胞株を容易に作製できた。この遺伝子導入試薬開発については共著者論文として発表している。
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