研究概要 |
本研究は,次世代情報通信機器であるフレキシブル・システム・イン・ディスプレイの創製を目指し,透明プラスチック基板上における高速動作薄膜トランジスタの実現を目標としている.研究代表者は,軟化温度の低い(~2500C)材料であるプラスチック基板での高移動度(~800cm^2/Vs)歪みシリコンゲルマニウム(SiGe)擬似単結晶(結晶粒径〉~30μm)の形成のため,「歪み印加用Geバッファ層の低温形成法」及び「低温エピタキシー法」を融合したアプローチの計画し,検討を行なっている. 本年度は,その鍵となる「歪み印加用Geバッファ層の低温形成」の高度化に注力した.これ迄に研究代表者が開発してきた「Au誘起低温層交換成長法」では,Geの低温成長(≧2500C)が実現するものの,Au中への高いGe原子の供給により,バルク核発生が界面核発生に優先するため,微粒径かつランダム結晶方位を有する多結晶Ge薄膜が得られる問題があった.そこで,大粒径化・方位制御を目指し,a-Ge/Au界面にAl_2O_3拡散防止層を挿入し,その結晶成長様態への影響を検討した.その結果,拡散防止層の膜厚を最適化(Al_2O_3厚:~7nm)することにより,バルク核発生を効果的に抑制し,大粒径(>20μm)Ge結晶が実現すると共に,その結晶面が(111)面方位に優先配向することを観測した.これらの結果を,拡散防止層の挿入による核発生サイトの制御の観点からモデル化すると共に,界面核発生時の優先配向性が界面のエネルギーの面方位依存性に起因することを明確にし,研究成果報告を行った.Ge擬似単結晶の低温形成法における粒径・面方位制御の指針となる成果であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で計画したアプローチを実行していく過程において,絶縁膜上の歪みGeバッファ層の低温形成技術は,研究の出発点となる鍵技術である.そこで,本年度の成果である大粒径(111)-Ge結晶の低温成長(250℃)の実現及びその成長モデルの解明は大きな意味を持つ成果であると言える.今後の研究の進捗を加速すると期待する.
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今後の研究の推進方策 |
現在,大粒径Geの面方位を(111)に制御する技術を取得しているが,テバイスへの応用を考慮すると,(111)面だけでなく,(100)や(110)面方位など,結晶面方位を自由に制御する技術が望ましい.そこで、今後,本機構で結晶核が発生する界面のエネルギー状態を変調することによる結晶面方位の制御可能性を検討する.なお,プラスチック基板上での成長の実証,並びに低温SiGeエピタキシャル成長などを検討する予定である.
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