本研究は、次世代情報通信機器である高性能フレキシブル・システム・イン・ディスプレイの実現を目指し、プラスチック基板上における高速薄膜トランジスターの基盤技術を創出することを目標としている。 本年度は、軟化温度の低い(~ 250oC)材料であるプラスチック基板上に高移動度シリコンゲルマニウム(SiGe)擬似単結晶を形成するため、「Au誘起低温層交換成長法」の検討を行なった。 まず、昨年度までの成果をもとに、Au誘起低温層交換成長法を用いてプラスチック基板上に形成した、方位制御され、かつ大粒径(≧10μm)を有するGe結晶薄膜の電気特性を評価した。成長温度におけるGe中のAu固溶度が極めて低いため、成長層中のキャリヤ密度が従来法(Al誘起成長法)に比べて低いことを明らかにするとともに、低いキャリヤ密度に起因して高キャリヤ移動度が発現することを明らかにした。 さらに、Au誘起低温層交換成長法をSiGe系に展開した。Si濃度の上昇に伴い、結晶成長様態が変化することを明らかにするとともに、その現象を、Si濃度上昇に伴って、結晶成長反応の活性化エネルギーが上昇することに起因すると推察した。プロセス条件の適正化を進めることで、SiGe系においても、方位制御され、かつ大粒径(≧10μm)を有する結晶薄膜を実現した。フレキシブル・システム・イン・ディスプレイの基盤技術として期待される成果である。
|