研究概要 |
本研究の目的は, GNSS受信機とカメラを融合した新たな測位技術を構築する, ことである. この実現のために, GNSS受信機の機能として実装されている測位技術に, カメラ画像による画像処理を複合した新たな測位技術を構築する. これにより, 従来のGNSS測位の精度・信頼性に関する問題を解決し, 汎用のGNSS受信機を用いて都市環境や山間部などの環境でも常に数十cm級の, 信頼性の高い位置推定技術を確立することを目指している. 本年度は初年度に引き続きソフトウェア上でGNSSの信号処理を行うGNSSソフトウェア受信機の開発と, 提案研究のメインとなる魚眼カメラとGNSS受信機を組み合わせた測位手法の研究を行った. まず, 昨年度まで開発したソフトウェア受信機を, 現存する全てのGNSSに対応させ, さらにリアルタイム測位が可能なように, 信号に含まれるナビゲーションデータの復号を行った. GPS, QZSS, GLONASS, Galileo, BeiDouに対応したリアルタイム測位アルゴリズムを構築し, 実環境で取得したデータにおいてその動作を確認した. また一方, GNSS受信機にビルなどによって反射や回折した電波が入った場合に, マルチパス誤差と呼ばれる測位誤差が発生し測位精度が低下することが知られている. 特に, 建物の陰に隠れた"不可視衛星"から回折・反射のみによる電波を受信した場合, GNSS受信機は直接波と区別することは困難であり誤って信号追尾することにより大きな測位誤差が発生する. そこで, 安価な魚眼カメラを用いて, 建物に隠れた不可視衛星を識別することで, GNSS受信機とカメラを組み合わせた測位手法の開発を行った. 天候や照明環境によらず確実に空領域を区別するために, スーパーピクセルを用いた領域分割, GNSS信号強度を用いた空領域の選択の2つを組み合わせたマルチパス判別手法を開発した. 実環境での試験により, 雲が多い天候や夕日などの悪条件においても, ロバストに不可視衛星を識別しマルチパス誤差を低減することが可能なことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から開発を続けてきた衛星からの信号をソフトウェアで解析し, 測位を行うソフトウェアGNSS受信機の開発と拡張を行った. さらに, 魚眼カメラ画像を用いた可視衛星判別手法を開発し実環境において実験を行った. 以上により, 申請者の研究の目的であるGNSS受信機とカメラの融合による測位手法の開発は順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究開発により, 魚眼カメラ画像を用いた可視衛星判別手法を開発したことで, 次のステップであるソフトウェア受信機とカメラ画像を用いた測位アルゴリズムの開発に取り組む. ソフトウェア受信機の開発はほぼ既に終了したため, 当初の予定通り最終年度はアプリケーションの実装と, 実験により収集したデータを用いた測位手法の検証を行う予定である.
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