研究概要 |
すでに天野教授のグループで開発されていたsimBio版のOu model(2012)をもとに、自律神経制御系を含む全身循環モデルを作成した。心室筋細胞モデルの制御については、Nobuaki model(2007)を参考に調整をおこなった。 Nobuaki model(2007)において細胞モデルであるKyoto model(2003)の収縮力を制御する箇所に、刺激頻度一収縮力関係を補正するための項が含まれていた。これは、Kyoto modelの収縮力が刺激頻度上昇に応じて弱くなるという性質が見られたためである。しかし、今回のモデルではイソプロテレノール(ISP)の濃度[ISP]で細胞モデルを制御するという目的上、補正項を見込んだ[ISP]を与えて収縮力を制御することができるよう、アルゴリズムを検討した。この検討により、循環モデルがより分子実体に基づく制御に近いものとなった。 今回新たに作成した、自律神経制御を含めた全身循環モデルで、ヒト乳児におけるHead-up-tilt試験の結果(血圧変化、心拍変化の計測値および時間経過)がうまく再現できることを確認した。さらに、このモデルを用いて運動状態を再現するためのパラメーターを4つ(vasodilation,activation,venoconstriction,resetting of baro-reflex)に絞り込んだ。循環モデルにおいて、VasodilationはResistanceを減少させ、activationは運動によって活動量が増す組織(上肢UPと下肢L1)の血流量を増加させ、venoconstrictionはComplianceやZero Pressure Filling Volumeとして計算されている静脈系血管にプールされている血液を循環血液の方へ分配する。最後のresetting of baro-reflexは運動時に圧受容体反射のresettingが起こるという現象を再現するための項である。この4つのパラメーターを調節することで、小型のほ乳動物でみられる運動時の臓器ごとの血液分布をうまく再現することができた。
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