研究課題/領域番号 |
12J06619
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
陳 揚 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 認知記憶機能 / 脳梗塞 / 拡散MRI / P2Y1受容体 |
研究概要 |
国立がん研究センター東病院との共同研究の下、MRスペクトロスコピーを行い脳梗塞後の海馬における代謝物量の変化を捉えようと試みたが有意な差は得られなかった。そこで度基本に戻り、海馬の免疫組織染色を行ったところ、アストロサイトの炎症活性化が脳梗塞後の認知記憶機能障害に影響しているのではないかという結果が得られた。具体的には、アストロサイトのマーカーであるGlial fibrillary acidic protein(GFAP)が梗塞側の海馬において強く発現していた。拡散MRIの解析から得られた結果では、平均拡散率(MD値)が減少していたが、これは炎症反応により活性化したアストロサイトが肥大・膨張を起こしたためという可能性が考えられる。 そこで我々は、血管炎症に抵抗性のあるP2Y1受容体欠損マウス(P2Y1KOマウス)を用いた実験を行った。このP2Y1KOマウスは脳梗塞後でも認知記憶機能を保持するという興味深い結果が得られ、海馬アストロサイトの炎症反応も抑制されているということが認められた。現在野生型マウスにP2Y1受容体のアンタゴニストを投与し、脳梗塞後の認知記憶機能の変化を評価している。さらにこのP2Y1KOマウスの海馬における拡散MRI解析を進めている。このマウスの海馬では、野生型に見られたようなMD値の減少が認められないとするならば、MD値が脳梗塞後の認知記憶機能をあらわす指標としてより有用であるということを示すことができるだろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国立がん研究センター東病院との共同研究で得られた結果は当初予想していたものとは違い、平成25年度から予定していた生体脳拡散MRIに関するフランスNeuroSpinでの研究もなくなった。しかしP2Y1受容体をターゲットとした研究が進んだため、ラットからマウスへと対象は変わったものの、脳梗塞後の認知記憶機能障害メカニズムを解明するという観点からすれば大きな進展が得られたものと考えられる。これまでの結果と、P2Y1KOマウスを用いた研究をまとめ、近々論文投稿を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
フランスでの研究予定はなくなったが、2013年4月からは東京大学大学院電気工学研究科電気工学専攻へ移り、そちらで最新の高磁場MRI装置を利用した研究を進めていく予定である。こちらでの研究テーマに関しては多少変更がある可能性もあるが、上記のラットからP2Y1KOマウスに関するまでの研究内容は、平成25年度中のアクセプトを目指す。
|