研究課題/領域番号 |
12J06627
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
小野寺 威文 東京薬科大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 機能未知遺伝子 / ygjD / yeaZ / マイトマイシンC / DNA架橋損傷 / Deinococcus radiodurans |
研究概要 |
今年度の研究では、生物に共通するygyD/JreaZオルソログの機能解明を目的に、放射線抵抗性細菌Deinococcus radiodurans yxiD/yeaZ遺伝子破壊株を用いて、溜のygi/yeaZ遺伝子破壊効果による細胞増殖への影響、様々なDNA変異原に対する生存率の測定及びプラスミド相補による遺伝子相補試験を行った。その結果、D. radiodurans yxiD/yeaZ遺伝子破壊株は野生株と比べ生育の遅延が僅かあったことから、ygjD/yeaZ遺伝子は増殖に重要ではないことが分かった。D. radiodurans ygjD/yeaZ遺伝子破壊株の様々なDNA変異原に対する生存率を測定した結果、H_2O_2とMNNGに対しては感受性を示さず、UV-C、γ線及びシスプラチンに対しては僅かに感受性を示した。しかし興味深いことに、MMCに対しては著しい感受性を示した。これより、ygjD/yeaZ遺伝子はDNA架橋損傷の修復に関与していることが見出された。さらにDNA架橋損傷修復は、相同組換え修復機構やヌクレオチド除去修復機構の協調によって修復されることから、ygjD/yeaZ遺伝子はこれらの修復経路に関与していることが示唆された。また、遺伝子相補試験により、D. radiodurans ygjD/yeaZ遺伝子破壊株のMMCに対する感受性は、ygjD/yeaZ遺伝子の機能欠損であることも実証された。以上から、D. radiodurans ygjD/yeaZ遺伝子はDNA架橋損傷の修復に関わる新規DNA修復遺伝子であることが明らかとなった。本研究結果は、生物間に共通するygjD/yeaZ遺伝子は新規のDNA修復遺伝子であることが見出されたことから、生命の根幹機能であるDNA修復機構の一端を解明できたことに非常に大きな意義がある。複雑であり未だ未解明部分が多く存在するDNA修復機構の解明は、有用なバイオ研究試薬や医学分野への応用が期待できるため非常に重要である。今後はDNA修復機構と関連づけてygjD/yeaZ遺伝子の機能を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
D. radioduransにおけるygjD/yeaZ遺伝子の機能解析について、今年度の研究計画通り、遺伝子破壊株の作製・単離、DNA変異原物質に対する生存率の測定等の研究を遂行できた。当該遺伝子の機能は、DNA架橋損傷の修復機構に関与していることを明らかにし、その成果を国際・国内学会及び学術雑誌に発表した。これより、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展している判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、D. rediodurabsにおけるygjD/yeaZ遺伝子の機能はDNA架橋損傷の修復機構に関与している明らかにした。ygjD/yeaZ遺伝子は他の生物にも保存されている遺伝子群であるため、当該遺伝子の生物間における機能共通性を解析する必要があると考えられる。そこで今後の研究課題として、D. radioduransの近縁種であるThermus thermophilusのygjD/yeaZ遺伝子をD. radiodurans ygjD/yeaZ遺伝子欠損株の細胞内で発現させ、その機能を相補するかどうかを調べる。
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