研究実績の概要 |
本研究では、宇宙空間における物質進化の化学的多様性を探るため、近傍の銀河であるマゼラン雲に存在する星形成領域に着目し、星間空間又は原始星周囲に存在する様々な分子の化学状態について、天の川銀河内の星形成領域との比較研究を行っている。 今年度は3年に渡る本研究計画の最終年度にあたる。今年度の計画では達成目標として、2年次に採択された観測計画の実施及びデータ解析、それに基づく研究発表及び論文の執筆、さらには新たな観測計画の立案など、複数の項目を挙げた。結果として、本年度はこれらの目標に対して部分的達成を遂げた。主な成果は以下の通りである。 マゼラン雲及び銀河系内の星形成領域に存在する分子ガス・氷などの化学状態に関する研究を推進し、2年次に観測及び解析作業を行った成果に基づき研究発表を行った。また、サブミリ波望遠鏡ASTEによる大マゼラン雲の星形成領域の観測計画が本年度新たに採択され、この観測を実施し、データの解析を行った。結果として、0.8 mm 帯では初めてとなるマゼラン雲のスペクトルラインサーベイデータが得られ、低金属量系外銀河の大質量形成領域に存在する暖かい高密度分子ガスの化学状態が明らかになった。また、0.8 mm 帯において高密度分子ガスからの強い輝線を示す天体が複数見つかり、これは今後の観測につながる成果である。これらの結果を受けて、今後はこのようなラインサーベイデータのサンプル数を増やすべく、ALMA・ASTEをはじめとした様々な望遠鏡を駆使した観測を継続していく。VLT, AKARI等の赤外線望遠鏡の観測結果に関する論文については、既に論文の大部分については執筆を終えており、27年度前半に投稿予定である。他の望遠鏡により得られたデータについても、データの解析作業はほぼ完了しており、早期に論文として発表することが可能である。
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