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2012 年度 実績報告書

GEMS衛星によるブラックホールのX線偏光観測の実現

研究課題

研究課題/領域番号 12J06671
研究機関東京理科大学

研究代表者

吉川 瑛文  東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード放射線検出器 / ガス電子増幅フォイル / X線宇宙物理学 / X線偏光観測
研究概要

2012年度、GEMS衛星によるブラックホールからのX線の偏光観測を目指し、ガス電子増幅フォイルの性能劣化の調査と、超巨大ブラックホールからのX線スペクトル解析を行った。
放射線検出器の有機性ガスは、電子雪崩を伴う電子増幅の過程で破壊されポリマー化する。そのため増幅された電荷量に比例し、増幅領域でポリマーが形成され、電場が歪み増幅度が低下する(Aging効果)。GEMS衛星では、ガス電子増幅フォイルを有機性ガスであるジメチルエーテル(DME)中で、2年間運用する。そこで、衛星の運用期間に相当するAging効果を定量的に調査した。X線発生装置でX線ビームを1mm^2相当の電子増幅領域に7時間照射し、40年間に相当する5.6E-3mC/mm^2程度の電子増幅をさせ、前後の増幅度を比較した。その結果、最大で5%の電子増幅度の減少があった。5%の変動がある場合でも、印可電圧をあげて、増幅度の調整が可能である。また運用期間は2年間であり、Aging効果は十分に小さいことが予想される。この結果をNASA/GSFCのGEMSチームに報告し、衛星の運用の指針となった。
超巨大ブラックホールがある銀河中心の活動銀河核(AGN)からのX線は、AGNの周辺の中性物質に吸収される。この中性物質の吸収量は年単位で変動することが近年報告され、原因として中性物質の幾何が変化したと考えられている。GEMS衛星計画では、ブラックホール(BH)からのX線が中性物質にコンプトン散乱または吸収された成分を偏光観測し、AGN周辺の中性物質の構造を調査することが計画されている。AGNが存在するNGC 3079のX線は、2000年にBeppoSAX衛星に観測され、さらに2008年にすざく衛星によって再度観測された。偏光観測の予備調査として、私はNGC3079のX線スペクトルを解析し、中性物質の吸収量が変動したことを突き止めた。また中性物質での散乱成分が、一般的なAGNよりも小さいことが分かった。以上の結果を2013年3月の天文学会で口頭発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

GEMS衛星計画のX線偏光計で使用される、ガス電子増幅フォイルとジメチルエーテルガスが2年間の運用期間でも十分に機能することを証明した。また、ブラックホールからのX線が偏光成分を持つ原因である中性物質による散乱現象を、X線スペクトルを解析することで調査した。研究目的である、ブラックホールのX線偏光観測の実現のために、X線偏光計の経年劣化を定量評価し、さらにブラックホールの偏光成分の予備調査をしたことは非常に重要であった。以上の理由から、研究は順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

ブラックホールのX線偏光観測の実現に向けて、X線偏光計の性能調査とブラックホールからのX線の時間変動を実施する。偏光計中でX線の光電効果によって発生した電子のドリフト速度を定量評価する。ドリフト速度を定量的に求めることは、X線の偏光方向を決定するために最重要である。また、ブラックホールからのX線の短時間変動を調査する。ブラックホールからのX線はガスの降着量によって強度が決まる。X線の偏光もまた降着流量によって変動することが予想されるため、ブラックホールからのX線の時間変動の調査は非常に重要である。
以上、検出器開発と観測データの解析の二つの手法から、ブラックホールのX線偏光観測の実現を目指す。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] NGC 3079の広帯域X線観測による年単位の光度変動2013

    • 著者名/発表者名
      吉川瑛文
    • 学会等名
      日本天文学会
    • 発表場所
      埼玉大学
    • 年月日
      2013-03-20

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公開日: 2014-07-16  

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