研究課題/領域番号 |
12J06674
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮本 裕美子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 外生菌根菌 / 群集構造 / 種多様性 / 標高傾度 / 冷温帯天然林 |
研究概要 |
本研究では、森林生態系において重要な機能を持つ外生菌根菌に着目し、(1)標高にそってどのように多様性が変化するのか、(2)その多様性がどのような環境要因によって決定されるのかを解明することを目的とする。本研究は、これまで解明されてきた動植物に加え、土壌微生物の多様性分布とその決定機構に関する新たな知見を得る点で、生態学における先進的な研究といえる。 調査は、多様な植生のみられる富士山と石鎚山(愛媛県)を対象とし、各調査対象森林内の外生菌根菌および埋土胞子の群集構造(種組成・各種の優占度)を解明した。本年度は石鎚山の天然林において標高にそって1haの調査区を3箇所設置し、各調査区において植生調査および土壌サンプリングを行った。調査区毎に土壌サンプルを50ヶ所で採取し、そのうちの25ヶ所において半径5m内のすべての樹種とその胸高直径を記録した。採取した土壌に含まれる根端に生息する菌根菌を形態分類および分子解析を用いて種を同定した。分子解析については、シーケンス解析により塩基配列を読み取り、得られた塩基配列とデータベースに登録されている既知種との比較を行うことで、菌根菌種の特定を行った。また埋土胞子として存在する菌根菌種については、採取した土壌に実生を植え、5ヶ月程度生育して菌根を形成させた。形成された菌根菌種についても、形態分類および分子解析によって種を特定した。 本年度は富士山での現地調査から得られたデータの統計解析を行い、各調査対象森林内の外生菌根菌群集構造(種組成・各種の優占度)を解明した。また、標高にそった種多様性の変化について、実際観察された種数、多様性指数、推定種数を用い、外生菌根菌と木本植物で比較した。最後に、外生菌根菌の種多様性及び群集構造について環境(土壌・宿主・植生・標高)との関連について多変量解析を用いて解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画通り現地調査を実施し、野外で採取した菌根菌の分類作業を行った。また分子解析を順調に進め、富士山での現地調査から得られた菌根菌のデータ解析・とりまとめを行い、種多様性および群集構造について環境との関連性を解明した。それらの研究成果を国際学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在進行中である分子解析・土壌分析を進め、石鎚山の菌根菌種を特定しデータの取りまとめを行う。調査地2地点(富士山と石鎚山)のデータを総括的に統計解析し、菌根菌の種多様性・群集構造と環境因子との関連性について、多様な空間スケールで解明を行う。また成木と胞子の菌根菌群集について比較し、極相林における胞子の役割について考察する。研究結果について国際誌への論文投稿、国内外の学会発表を通して、成果の普及を行う。
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