研究課題/領域番号 |
12J06678
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
島﨑 未央 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 種物 / 油 / 流通 / 水車絞油業 / 素人 / 日本史 / 地域 |
研究概要 |
研究計画では、①油の原料になる種物(菜種・綿実)の流通統制に関して、これまでの大坂の町触の分析に株仲間名前帳の前書や泉州在方の史料を掛け合わせ、分析の深化を図ること、②泉州泉郡池田下村の水車絞油屋・門林佐五平家を分析の軸に据え、村落共同体の構成員でありながら絞油屋仲間という共同組織に属する存在を、町田哲氏の村落構造分析にかけ合わせて地域を論じること、③絞油屋の経営が地域社会に投げかける社会関係の分析を深めるために油の生産・流通の局面を掘り下げること、を課題とした。 ①②に通底して、昨年度部落問題研究者全国集会分科会歴史 I 〈流通と身分的周縁〉での口頭報告を論文化したものが、『部落問題研究』に掲載された。また、史学会大会ミニ・シンポジウム「江戸幕府の経済政策」において、「近世中後期、岸和田藩領の綿実流通をめぐって」と題し、口頭報告をおこなった。 ②に関して、近世大坂研究会総括円座「近世身分社会の比較史―法と社会の視点から―」(基盤研究B/研究代表者 : 塚田孝)において「池田下村における水車絞油株の所有と経営」と題する口頭発表を行い、それを論考化したものが塚田科研の最終成果をまとめた大阪市立大学文学研究科叢書8『近世身分社会の比較史―法と社会の視点から―』に掲載された。③に関しては、泉州を含む在方で生産された油を集荷する大坂出油屋の史料「米屋本文書」(一橋大学付属図書館蔵)を用い、①出油屋仲間構成員の性格、②泉州から大坂へ油を出荷する際に中継する機関である堺荷次所の性格と取引形態、に関して、コンパクトな口頭発表を行った。これによって、次の課題を見通すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で掲げた①②③について、口頭報告もしくは論文化の成果を残すことができた。①について、大坂を中心とした種物の流通統制を併せて再評価することは急務であり、自覚的に作業を進めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
第一に、課題①について、大坂を中心とした流通統制と在地の実態とを照らし合わせた再考察が必要である。これについては、A : 大坂で種物の集荷を担った種物問屋の名前帳の分析をすすめること、B : 町触分析は法の枠組みが大きく改変された天保3年まで行っているため、以後幕末期まで分析を広げ、展開を把握すること、が課題である。第二に、課題②について、池田下村を分析の軸としながら、その近隣地域に視野を広げ、水車絞油業と地域の再生産構造との関係、個別領主支配との関係を明らかにすることが課題である。これについては、和泉市史編さん室所蔵・寄託の諸史料や自治体史を閲覧し、分析を進める。こうした作業を前提に考察を加え、研究成果を学会などで口頭報告した後、学術論文をまとめ、学術雑誌に投稿する。
|