繊毛は、微小管から成る軸糸を基底小体が支える構造をしており、脊椎動物のほとんどの上皮細胞に存在する細胞小器官である。個体発生において、繊毛は原腸陥入や神経管閉鎖の形態形成に関わるなど重要な機能をもつ。しかし、詳細な繊毛形成機構は解明されていない。アフリカツメガエル胚の表皮には、哺乳類の気道上皮にも見られる多繊毛細胞が存在する。本研究では、アフリカツメガエル胚表皮をモデル系として、繊毛形成に関わる新規因子の同定や機能解析を通じて、繊毛形成メカニズムを解明することを目的としている。初期胚発生の進行に伴って、表皮組織では繊毛前駆細胞への運命決定段階、基底小体の複製などの繊毛形成準備段階、軸糸を伸長する成熟繊毛細胞への最終分化段階など、数段階を経て繊毛を形成させる。表皮においてNotchシグナルを過活性化させると繊毛細胞の形成が阻害され、Notchシグナルを阻害すると繊毛細胞の過形成が起こることから、繊毛前駆細胞の運命決定はNotchシグナルの側方抑制によって調整されていると考えられている。本研究により、初めに機能未知であった Mab21 like3(Mab21-L3)が、初期胚発生において必須の因子であることを明らかにし、さらに胚表皮における繊毛形成過程に関与する因子であることを見出した。また、繊毛形成と深く関わるNotchシグナルとMab21-L3との関連を様々な実験で解析した結果、Mab21-L3の表皮における繊毛形成での重要な機能が解明できつつあり、こうした解析を通じて、繊毛形成メカニズムの一端を明らかにできると考えている。
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