研究概要 |
本研究は2型糖尿病,アルツハイマー病などの治療が期待できるレチノイドX受容体(RXR)を標的とするリガンドの簡便な探索法の確立を目的とするものである.既存のRXRリガンド探索法は,要する時間や費用が課題である.申請者は,簡便にリガンド結合評価が可能な蛍光偏光法に着目し,蛍光性RXRリガンドを創出してきた.しかし,これまでに創出した蛍光性リガンドは蛍光が弱いなどの課題が残る.そこでこれらの課題を解決した化合物の創出を目指し,平成24年度は新規蛍光性RXRリガンドの創出,その蛍光偏光試験への応用を行った. 1.蛍光性RXRアゴニストの創出 既存のRXRアゴニストは活性および蛍光強度の弱さが問題であった.そこで,既存の高活性なRXRアゴニストの構造中の極性官能基の位置に着目し,分子設計および合成,活性評価を行った.その結果,既存の蛍光性RXRアゴニストよりも50倍以上強力な蛍光性RXRアゴニスト(E_<C50>:18nM)の創出に成功した.今後は蛍光強度の向上を行い,リガンド探索への応用に適した化合物の創出を目指す. 2.蛍光性RXRアンタゴニストの創出 これまでに蛍光偏光法に利用可能な蛍光性RXRアンタゴニストを報告しているが,蛍光波長が短いことなどから,実用化には至っていない。そこで,既存のRXRリガンドに側鎖を介して蛍光波長の長い蛍光団を導入した化合物を設計し,合成した.活性評価の結果,既存のRXRアンタゴニストと同等の活性を示す化合物見出した.創出した蛍光性RXRアンタゴニストを用い,蛍光偏光法への応用を行ったが,蛍光偏光法には適しておらず,更に構造最適化を要することが分かった.具体的には化合物の剛直化,低脂溶性化が必要である.平成25年度は得られた構造活性相関情報に基づき,上記課題を解決した新たな分子を創出し,本研究の目的とするRXRリガンドの簡便な探索法の確立を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は蛍光偏光法の確立までには至らなかったが,得られた構造活性相関情報,および蛍光偏光データから,今回創出した化合物の問題点は分子構造の自由度の高さと脂溶性の高さであると予想している.平成25年度はこれらの課題を解決した化合物の創出を行い,蛍光偏光法などの蛍光アッセイの確立を目指す.また,見出した蛍光性RXRアンタゴニストを用いて,RXRリガンド探索に用いるRXRの精製用アフィニティーカラムへの展開が可能だと考えられた.そこで,RXR精製用アフィニティーカラムの作成を行い,米国デトロイトの共同研究者であるDr.Manohar Ratnamのもとで,機能評価などを行う予定である.
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