研究概要 |
本研究はアルツハイマー病, 自己免疫疾患などへの治療高価が期待できるレチノイドX受容体(RXR)を対象とする創薬研究, 健康食品創出を支援するものである. 具体的にはRXRを標的とするリガンドの安価かつ簡便な探索法の開発を目的とする. 既存のRXRリガンド探索法には要する費用や時間に課題があるため, 申請者は簡便なリガンド結合評価が可能な蛍光偏光法に着目し, 蛍光性RXRリガンドの創出を行ってきた. しかし, これまでに創出してきた蛍光性RXRリガンドには蛍光強度やRXRアゴニスト/アンタゴニスト活性に改善の余地が残っていた. 採用第1年度Hにはアゴニスト活性を既存のものより50倍高活性な蛍光性RXRアゴニストを創出し, 既存のRXRアンタゴニストと1司等のアンタゴニスト活性を示し, 十分な蛍光強度を有する蛍光性RXRアンタゴニストを創出したが, 前者には蛍光強度, 後者には高脂溶性などの物性の改善が必要であった. そこで平成25年度はこれら物性の改善を行い, 蛍光偏光法への応用を日指した. 1. 蛍光性RXRアゴニスト 昨年度見出した蛍光性アゴニストの蛍光強度を改善すべく, 分子構造の一部をクマリン構造に変換した化合物をデザインし, 合成を試みたが収率の問題などから目的化合物の創出には至っていない。 2. 蛍光性RXRアンタゴニスト 蛍光団もしくは蛍光団を導入するのに用いているスペーサーを低脂溶性な構造にする事で, 昨年度創出した蛍光性アンタゴニストの脂溶性を100倍程度低下させた(計算値)化合物をデザインし, 合成を行った。本化合物も蛍光偏光法には不適であったが, 核内受容体がアンタゴニストの結合に伴い転写抑制因子と複合体を形成するという減少に着目し, 蛍光性RXRアンタゴニストと蛍光標識転写抑制因子とのFRET現象を測定する事で試験化合物の評価が可能である事を見出した. 平成26年度はFRET現象を利用したRXRリガンド探索法の確立を行うとともに, 蛍光偏光法に適した蛍光性RXRリガンドの創出を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は蛍光偏光法に適した化合物の創出を目指したが, 蛍光性アゴニストの創出には合成ルートの検討が必要であり, 蛍光性アンタゴニストは蛍光偏光法には不適であった. しかし, 蛍光性RXRアンタゴニストと蛍光標識転写抑制因子を用いRXRタンパク質存在下でのFRET現象を測定する事で試験化合物のRXRへの結合を評価する事が可能である事を見出せた.
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今後の研究の推進方策 |
今回見出したFRET現象を利用したRXRリガンドの評価法には, S/B比(signal/background比)および蛍光性RXRアンタゴニストと蛍光標識転写抑制因子とのFRET効率が低い等に改善の余地が残る. そこで, 平成26年度は評価法条件の最適化を行うとともにFRETに適した新規蛍光性RXRリガンドの創出を行う予定である. また, 平成24年度, 平成26年度の研究成果から, 蛍光偏光法に供するリガンドの条件として, 低脂溶性である事の他に, リガンド中の蛍光標識部位の自由度が低く抑えられる事も重要であると考えられる. 以上の観点から, リガンドにスペーサーを介して蛍光団を導入する手法ではなく, リガンドそのものを蛍光性分子化するという戦略で蛍光偏光法に利用可能な蛍光性RXRリガンドの創出を目指す.
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