研究課題/領域番号 |
12J06759
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井元 祐太 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 原始紅藻シゾン / ペルオキシソーム分裂装置 / ダイナミン |
研究概要 |
本研究の目的は、動物・植物細胞で脂肪酸代謝等に関わり必須の単膜系オルガネラであるマイクロボティ(ペルオキシソーム)の分裂装置を同定・単離し、それを構成する全タンパク質とその遺伝子を同定すること、これらの遺伝子の分裂増殖における役割と進化的意味を同定することある。本研究ではこの目的に沿って、最もシンプルな細胞構造を持つモデル真核生物Cyanidioschyzon merolaeを用いて研究を遂行し、次の成果を得た。 1.マイクロボディの分裂面は従来のグルタールアルデヒドとOSO_4による固定法では細胞切片の電子顕微鏡観察が困難であったが、高圧凍結固定法を用いることによって明瞭に観察することができた。その結果、マイクロボディ分裂面膜上の細胞質側に、リング状の高電子密度構造体(マイクロボディ分裂リング)が形成されることが明らかになった。 マイクロボディ分裂リング、POD-ring(Peroxisome-dividing ring)は、幅約5nm、直径10-200nmはミトコンドリア分裂(MD)リング(直径150,1200nm)や葉緑体分裂(PD)リング(直径150-1300nm)と比較すると非常に小さく、電子密度も低い構造体であった。 2.マイクロボディ分裂を完全に同調させたシゾンから無傷な分裂期マイクロボディを単離し、非イオン性活性剤による処理と密度勾配遠心を行うことで、マイクロボディ膜に付着したPOD-ring画分を得た。単離したPOD-ring画分をSDS-PAGEと、MALDI-TOF/MSによる分析を行った結果、ダイナミン、カタラーゼ及びPEX遺伝子等を含む15種のタンパク質がPOD-ring画分に含まれていることが分かった。 3.抗Dnm1抗体を用いた免疫蛍光染色の結果、ダイナミンはミトコンドリア分裂に使われた直後にマイクロボディ分裂面にリング状に局在していることが分かった。さらに単離したPOD-ringは免疫電子顕微鏡観察により、約4nmのダイナミンを含む紐状のリング(Dynamin-basedring)とダイナミンを含まない繊維構造をもつリング(Filamentous ring)の2種類のリングの複合体であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画は、(1)ダイナミンのマイクロボディ分裂における機能解析、(2)シゾンの分裂期マイクロボディの単離法の確立であったが、これらに加えマイクロボディ分裂リングの同定・単離に成功し、免疫電子顕微鏡等の手法を用いてPOD-ringの構造と機能を明らかにすることにまで研究が発展した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で確立したマイクロボディ、及びPOD-ringの単離法を基にマイクロボディ分裂に関わる候補遺伝子の抗体を作成し、免疫蛍光・電子顕微鏡による局在解析、アンチセンス法による機能解析等、の詳細な解析によってマイクロボディの分裂面で機能するタンパク質を明らかにする。すでに候補となる遺伝子の解析を進めており、また、同定した遺伝子の機能およびマイクロボディとミトコンドリアまたは色素体間における形態学的な相互作用を分子系統上、原始紅藻の前後に位置する灰色藻類Cyanopbora paradoxaや緑藻Chlorella Vulgarisを用いて、疫蛍光・電子顕微鏡による局在解析、遺伝子破壊・抑制による機能解析等、の詳細な解析を進め藻類におけるマイクロボディ分裂増殖機構の普遍性を明らかにする。
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