研究概要 |
私はHorndeski理論における遮蔽機構について研究した. 1998年に発見された現在の宇宙の加速膨張は, 重力理論の修正を示唆している可能性があり, 近年になって修正重力理論は活発に研究されている. このような理論において, 大スケールでは重力理論の修正により加速膨張が実現される一方で, 小スケールでは太陽系内における局所重力実験の結果を満たすように重力理論の修正の効果が遮蔽されなければならない. 我々はこのような遮蔽機構に関して, 修正重力理論の様々な模型を包括して扱うことができるHorndeski理論を用いて研究を行った. 具体的には球対称時空において基礎方程式を導出し, 弱い重力場の近似等, 適切な近似の下でそれらを解くことにより小スケールにおける重力理論の修正の振る舞いを確かめ, 局所重力実験を満たすために必要となる一般的な条件を解析的に求めた. 更に, 太陽内部等の高密度領域から外部の低密度領域に移る際, 基礎方程式から求めた内部解と外部解とが滑らかに接続するための条件を解析的に導き, また近似を使わず基礎方程式を数値的に解くことで解析的に求めた条件の妥当性を確かめた. これらの条件を具体的な模型に当てはめた結果, 例えばGameon重力理論等に現れる一部の非最小結合項は, 他の項に比べて非常に強く抑制されなければならないことを示した、更にBrane-World理論等の高次元の理論に動機付けられた模型に関しても, 同様の条件から課せられるべき制限を導いた。以上の結果をまとめた論文は, 2013年8月にJournal of Cosmology and Astroparticle Physicsに掲載された. また, この論文以外にも, 球対称時空における摂動を用いた実効的な場の理論を用いて, スカラー自由度が一つ存在するような最も一般的な重力理論を考察し, その研究成果の公表は現在, 準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り, Homdeski理論における遮蔽機構に関する我々の論文は2013年8月にJournal of Cosmology and Astroparticle Physicsに掲載された. また, 球対称時空における摂動を用いた実効的な場の理論に関しても, 現在その解析の大部分が完成しており, 近日中に公表できるよう準備中であり, 順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在進行中である, 球対称時空における摂動を用いた実効的な場の理論を用いた, スカラー自由度が一つ存在するような最も一般的な重力理論に関する研究を, 近日中に公表することを第一の目標とする. また, この研究で導いた結果は様々に応用できる可能性がある. 例えば, この結果に弱い重力場の近似を課すことによる, より一般的な枠組みでの重力修正効果の遮蔽機構の研究等がまず考えられる. 従来の個々の遮蔽機構に関する研究を統一的に扱い, 摂動論を用いてそれぞれの遮蔽機構のもとでの解の安定性を解析的に議論する。この研究に関しては現在準備中であり, 本年度中に公表することが第二の目標となる.
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