研究課題/領域番号 |
12J06791
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
関根 豪政 慶應義塾大学, 総合政策学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 地域貿易協定 / EU(欧州連合) / 環境関連条項 / 自由貿易協定 |
研究概要 |
研究実施計画では、比例性の概念が関連する地域貿易協定(RTA)条文の抽出及び整理を最初の作業としていた。当該作業については、日米欧等の主要国や、韓国、メキシコ、チリ等RTAに積極的な国の協定の条文から着手し、概ね予定に従って抽出作業を遂行することができた。その上で、協定条文の分析を、EUによるRTAを中心に実施した。その際、具体的な条文として環境関連条項を選定した。 EUが締結したRTAの分析に際しては、Baldwinら(例えば、Baldwin,Evenett & Low(2009)が示す多数国間化の概念を基礎に考察を試みた。Baldwinらが捉える多数国間化は、RTAの効果の多角的な波及に焦点を置くが、本研究では、特定の条項が複数協定で採用されるとの意味で多数国間化を捉え、より法学的な視点から分析を行った。その結果、第1に、近年のEUのRTAにおける環境関連条項がより多様化ないし詳細化する傾向が確認された。第2に、これらの規定の一部は多数国間化の可能性を含む一方で、特に急進的な規定に関しては多数国間化が困難となる状況が生じうることが明らかになった。第3に、多数国間化が困難な条項が多く存在することは、一般的例外条項の解釈がEUのRTAにおいて独歩的に展開する引き金となりうることから、RTAのハブとして影響力の強いEUにおいては特に多数国間化に配慮した条項を設けることが必要とされる旨が示唆として得られた。 本研究成果の意義としては、まず、EUのRTAを仔細に分析した点が挙げられる。それにより米国その他の国のRTAとは異なる独自性が発見された。また、RTA政策をよりグローバル規模の視点(多数国間化の概念)から分析した点も、本研究の重要性を高める要素である。RTAの現状を全体的視点から捉えることによって、RTA政策の将来像を描くための判断材料を提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、情報収集と分析の着手を目的としていた。情報収集としては、世界各国のRTAの条文抽出作業を行い、主要な国の条文の抽出は完了することができた。また、分析の着手についても、EUのRTAの分析を完了することができた。このように本年度に予定していた作業はおおむね完了することができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究実施計画に記載した研究内容(すなわち(1)比較対象とするRTAの範囲を拡大し、また、(2)RTA規定とWTO(世界貿易機関)協定規定との相互関連性の検討を行う)に沿って研究を進める予定である。EUの研究が完了しているので、それと特に衝突を起こしやすい他国の協定規定に着目し、相互関係について検討したい。 また、初年度から得られた教訓は、RTA規定とWTO規定の具体的な既定の相互比較の分析の基礎となる両者の関係一般に関する総論的考察の重要性である。これは各論的な比較分析の集積の上で実施する予定であったが、前倒しし、両者を並行的に行うことにより、比較分析との相乗効果が生ずることを狙う。
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