研究課題/領域番号 |
12J06812
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松原 綱之 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ニュートリノ / 混合角θ_13 / 原子炉ニュートリノ / 精密測定 |
研究概要 |
本実験は国際共同実験Double Choozにおいて、ニュートリノ混合角θ13の精密測定を行うことを目的とする。混合角は質量と同じく、ニュートリノの性質を示す重要なパラメータである。近年、本実験をはじめとする原子炉・加速器ニュートリノ振動実験により、θ13が有限値を持つことが明らかになった。有限値を持つことが明らかになった今、レプトンのCP対称性が破れているかどうかを決める上で、その精密測定化の意義は高まっている。 本研究ではθ13測定感度向上のために、ニュートリノフラックスとエネルギー再構成精度に由来する系統誤差の削減を目標に掲げた。採用初年度はエネルギー再構成の改善を重点的に行い、新しい手法を開発することで系統誤差の削減に成功した。残るニュートリノフラックスに由来する系統誤差の削減には前置検出器の稼働が必要となる。そのため、昨年度は信号ケーブルの敷設、光電子増倍管のインストール、高電圧印加装置のインストール事前準備などの作業に従事のため、フランスのChooz原子炉への出張を行った。また、新たに担当したオフラインツールとデータ処理責任者として、前置検出器の解析に向けた準備に尽力した。 一方、現在稼働中の後置検出器により得られたデータの解析を並行して行った。主にθ13導出のための統計処理を行うグループに所属し、系統誤差を考慮したカイ2乗検定の手法を開発した。この結果にっいて3編の論文を投稿するとともに、カナダで行われた国際会議での招待講演および日本物理学会で最新結果の報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、ニュートリノフラックス起源の系統誤差を大幅に削減するための前置検出器の建設を最優先課題とした。現状、この系統誤差がθ13測定感度を制限しており、その改善によって測定感度の向上が期待される。建設作業に予期せぬ問題があり全体のスケジュールに若干の遅れが生じたものの、日本グループが担当する装置に関してはスケジュール通りに遂行され、期待通りの進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、前置検出器の建設は最終段階にあり、データ取得が目前となっている。今年度の上半期は、引き続き建設作業を共同研究者と協力して行うとともに、データ取得後迅速に解析結果を得るための準備のためのエフオートも引き上げていく予定である。現在の問題点は前置検出器建設後のシミュレーションツールの準備が完了していないことである、迅速な解析結果を得るためにも主導的に準備を推進していきたい。今年度の下半期はいよいよ前置・後置での測定が始まると期待される。上半期で十分な準備を行えば、年度末ごろには解析のためのデータが出そろうと考えられる。発表の時期は解析結果とグループの方針によって決まるため不透明であるが、今年度中に目標とする系統誤差を大幅に削減したθ13測定が可能となる見通しである。
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