小角粒界転位を用いたナノ細線構造の制御手法を確立するためには、粒界の方位関係と導入される転位配列構造との関係を明らかにすることが必要である。本研究では、アルミナにおける粒界転位配列構造に関する基礎的知見を得るため、アルミナ{11-20}面(a面)に導入される転位構造を解析することを目的とした。アルミナa面基板2枚を1500℃大気中にて接合することで、{11-20}/〈11-20〉小ねじり角粒界を含むバイクリスタルを作製した。さらに、機械研磨法およびアルゴン研磨法を併用し、a面を表面とする薄膜試料を作製した。粒界の転位構造解析には加速電圧200kVの透過型電子顕微鏡を用いた。粒界には六角形状の転位ネットワークが観察され、それは〈1-100〉、〈1-10-1〉、〈22-01〉方向に転位線を有する転位から構成されていることがわかった。透過型電子顕微鏡法によるg. b解析と結晶学的考察の結果、それぞれの転位のバーガースベクトルは、〈1-100〉、1/3〈1-10-1〉、1/3〈2-201〉と判定され、転位ネットワークは純粋ならせん転位から形成されていると結論付けられた。また、転位ネットワークの転位間隔より、粒界のねじり角は約0.7度と見積もられた。本結果は、{11-20}/〈11-20〉アルミナ小ねじり角粒界の転位補償機構に関する知見を与えるものであり、結晶方位制御による転位配列設計の指針の一つとして重要なものである。また、理想的な〈1-100〉、1/3〈1-10-1〉、1/3〈2-201〉らせん転位を作製できたことから、今後これらの詳細な構造解析研究の進展が期待される。
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