研究課題/領域番号 |
12J06837
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 和紀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 翻訳 / 真核生物 / リボソーム |
研究概要 |
本申請研究の目的は、真核生物の変異rRNAリボソームの精製技術の確立と、変異体による真核生物リボソームの機能解析である。 変異rRNAリボソームは、出芽酵母内で変異rRNAリボソームを発現・成熟させ、アフィニティー精製により野生型rRNAリボソームを分離することで精製する。この精製技術を確立するために、変異rRNAと野生型rRNAを共発現できる出芽酵母株の作成と、rRNAに付加しても高い分離能を保持できるRNAタグとその付加部位の精選を行う。 精製技術確立後には、tRNAまたは解離因子eRF1との相互作用を介した遺伝暗号解読でのリボソームの機能、および、変異rRNAリボソームの抗生物質への感受性の変化による抗生物質の細菌特異性の背景を解析する。具体的な解析部位として、まず18S rRNAのコドン解読部位を解析する。rRNAのコドン解読部位の真性細菌での保存部位は、コドン-アンチコドン対合との相互作用により、GTP加水分解の誘導に必要なリボソームの構造変化を起こすとされている。つまり、正確なセンスコドン解読の監査を担っているとされている。真核生物でのコドン解読部位の機能性を明らかにするために、真核生物rRNAのコドン解読部位への変異導入による、GTP加水分解、アミノ酸転移反応とペプチド鎖解離反応の変化を検証する。また、コドン解読部位の細菌での保存部位は抗生物質の主要な作用部位である。真核生物rRNAのコドン解読部位への変異導入後、抗生物質による翻訳阻害効率を検証することで、抗生物質の細菌特異性の背景を塩基レベルで明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度から、変異rRNAにタグ配列も付加し、タグ付きの変異rRNAリボソームを溶出画分として精製する方針へと計画を変更した。その結果、十分な精製度を確保することができた。また、変異rRNAと野生型rRNAを共発現させる出芽酵母株の作成を完了した。計画変更のため遅れは生じたが、着実に前進している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、リボソーム変異体の精製技術確立と同時並行で、終止コドン解読の際のリボソームの機能部位を、終止コドン解読の機能因子であるeRF1、eRF3を用いて解析した。解析の結果、tRNAによるセンスコドン解読時に機能するリボソームの部位が、タンパク因子が働く終止コドン解読時にも、同様の作用機序で機能していることが示された。この知見は、リボソーム変異体を用いた遺伝暗号解読機構の解析の重要な足がかりとなる。遂行しているリボソーム変異体の精製技術確立後には、リボソーム側からの解析を実施する。
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