本研究は環境倫理から二次的自然をめぐる学際的な分析を可能にする自然概念提供を目的にする。そこで本研究はフィールドワークを基本とする社会学的な研究手法を用いて、現場の問題から出発してローカルな環境倫理を構築することにした。二次的自然におけるフィールドワークを通じて環境倫理的規範を二次的自然保全の多義的枠組みから抽出した。 兵庫県加古川市富木地区におけるフィールドワークを引き続き行い、人間とため池のかかわりを時間軸、及び主体ごとに整理し、ため池保全における多義的枠組みを明細化する。加古川市西地区ため池協議会の設立過程についての調査を通して、生物多様性保全、農業水利、防災を意図とする広範囲にわたる地域連携の枠組みを明らかにできる。 佐渡市の岩首の棚田を見学し、棚田耕作者のインタビューを通じて、棚田の米の収益で生計が成り立たなくなっている中で、耕作者は副業、退職金で現金収入を得ながら棚田を耕作し続けるために、棚田見学、トキの餌場としてのビオトープ作りをして工夫を凝らしている。それは兵庫県の加古川市のため池で見られた事例と同様に、現代的な複合生業を行いながら、余白の農業を棚田で工夫して行われている実態を明らかにした。 さらに佐渡市の石名地区や松ヶ崎地区への調査を通じて、農業をベースにした生活における多義的枠組みだけでなく、漁業、商業を含んだ形態を調査し、抽出し、比較した。
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