研究課題/領域番号 |
12J06868
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
瀧上 舞 山形大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 同立体分析 / 食性 / 炭素 / 窒素 / ストロンチウム / コカの葉 / パコパンパ / ナスカ |
研究概要 |
本研究課題の大目的である古代人の生活復元について、当該年度は古人骨・古獣骨の分析を重点的に行った。ペルー北部高地のパコパンパ遺跡の調査では、アンデス文明の発展初期にあたる形成期(1500-1BC)において、炭素・窒素安定同位体比分析から、トウモロコシの摂取量が増加した時期についての見解を示すことができた。また、同時代の資源輸送を支えたラクダ科動物の移動を検証するため、ストロンチウム同位体分析を進めた。社会階層化が進んだ時期の経済基盤についてのこれらの研究を複数の研究会で発表し、活発な議論を行うことができた。さらに、当該研究員が分析したナスカ地域のミイラの毛髪分析から得られたAD1000-1500年頃の食性と、先行研究で報告されていたAD1-1000年頃の食性を比較することで、環境変化がヒトの食生活を向上させたという研究結果を示すことができた。毛髪中のコカイン分解物の分析は行えなかったが、ブラジルのリオデジャネイロで開催された第八回ミイラ研究国際会議に参加した際に多くのミイラ科学研究者と交流を深めることができた。特に、昨年、インカの生賛となった子供ミイラの毛髪でコカの葉利用についての論文を発表していたWilson博士とお会いし、古代人のコカの葉利用推定のための共同研究を進めることで合意できた。最終年度には古代人の毛髪を用いたコカイン分解物の分析を行う予定で、現在調整を進めている。最後に、当該年度はこれらの研究について一般市民の前で話をする機会が多く、アウトリーチ活動を積極的に行えた。古代アメリカ研究者の前での研究発表も数多く行ったが、国際雑誌への論文投稿はまだ行えておらず、現在準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の報告書に記載した通り、当該研究を申請した際に共同研究を予定していたスイスのStaub博士から研究延期を提示されていたため、現在まで分析を行えていない。当該年度は、国際学会で会ったイギリスのWildon博士と新たな共同研究の公約を取り付けることに成功したが、いまだ毛髪のコカイン分解物の測定には至っていない。現在は測定個数や測定費用についての調整を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、まず毛髪のbulk分析を行い、毛髪一本中に含まれるコカイン分解物の量を調べるところから始める。 昨年度までに、ペルー滞在中に自身で一定量のコカの葉を一定期間咀嚼する実験を行っている。自身の毛髪と古代人の毛髪を分析し、そのコカイン分解物の残存量を比較することで、具体的にどのくらいの量のコカの葉を当時の人々が摂取していたのかを推定することが可能になる。Wilson博士から分析費用等の見積もりが来たところで、試料を郵送し、分析を行って頂く予定である。
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