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2012 年度 実績報告書

炎症性腸疾患のための創薬研究: 分子イメージング技術新規診断用薬剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 12J06885
研究機関岡山大学

研究代表者

東川 桂  岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード放射性診断薬剤 / 炎症性腸疾患 / Toll-like receptor-4(TLR-4) / 大腸がん / Cytotoxic T Lymphocyte-Associated Antigen-4(CTLA-4)
研究概要

治療を行う前に、疾病に関係する生体機能分子の挙動を把握することは、分子標的治療の治療効果を高めるうえで非常に有用である。そのため、炎症性腸疾患の病態に密接に関与する生体機能分子の発現・動態を画像化できる放射性診断用薬剤の開発が望まれるが、これらの分子を標的とした放射性診断用薬剤の開発はほとんど報告されていない。一方で、申請者はこれまで、腸の炎症部位において、Toll-like receptor-4 (TLR-4)のmRNAの発現量が、腸炎の起きる非常に早期の段階から、腸炎の進行度に応じて増加することを見出していた。しかしながら、現在臨床で使われている核医学診断装置で画像化しやすいものは、mRNAではなくタンパク質であるため、腸の炎症部位においてタンパク質レベルでもTLR-4が増加していることを調べる必要があった。そこで、ウェスタンブロット法により、TLR-4のタンパクレベルでの発現量に調べた。その結果、タンパク質レベルでも、腸の炎症部位においてTLR-4の発現量が著しく増大していることを確認できた。
また併せて、炎症性腸疾患に高頻度で併発する大腸がんへの移行の予防に寄与するより高度な診断法の確立を目標に、大腸がんをイメージングするための放射性診断用薬剤の標的分子の探索も行った。RT-PCR法、および免疫組織染色の結果、大腸がん組織では、免疫抑制作用を示す分子であるCytotoxic T Lymphocyte-Associated Antigen 4 (CTLA-4)が発現していることを見いだした。そこで次に、抗CTLA-4抗体に金属キレーターであるDOTAを結合させ、ポジトロン放出金属核種である64Cuで標識することにより、CTLA-4を画像化するための放射性診断用薬剤(64Cu-DOTA一抗CTLA-4抗体)を作製することに成功した。さらに、この薬剤を担がんマウスに投与し、大腸がんへの集積をPETイメージングにより調べたところ、CTLA-4を発現する大腸がんにより高い集積を示した。すなわち、^<64>Cu-DOTA-抗CTLA-4抗体は大腸がんを検出するための放射性診断用薬剤となる可能性を示すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究計画書に記入した昨年度の達成目標は、炎症性腸疾患、あるいは大腸がんの診断の指標となる生体機能分子を探索するところまでであったが、大腸がんの研究に関しては生体機能分子の探索だけに留まらず、次年度の目標であった放射性診断用薬剤の開発まで進めることに成功しているため。

今後の研究の推進方策

引き続き診断の指標となる生体機能分子の探索を行うとともに、炎症性腸疾患、および大腸がんの診断に利用できる放射性診断用薬剤の開発を進める。特に、炎症性腸疾患に関しては、TLR-4のタンパク質レベルでの発現と病態の進行度との関係を調べ、診断指標となりうるかどうかを検証した後、金属キレーター分子(DOTA等)と抗体などに結合させ、放射性金属核種(^<64>Cuや^<111>In等)で標識して放射性診断用薬剤を作製する。金属キレーターと抗体が結合しているかどうかの確認は、Matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry(MALDI-TOF-MS)法で行う。作製したプローブの標的分子への結合能は、Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)や水晶発振子マイクロバランス(QCM)法で評価する。放射性診断用薬剤の作製に成功したものに関しては、Yカウンターや、PETやSPECTなどの核医学診断装置を用いることで、疾病部位への放射性診断用薬剤の集積性を評価する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] (5) CTLA・4標的とした画像診断薬によるがん微小環境イメージング2012

    • 著者名/発表者名
      東川 柁
    • 学会等名
      (5) 第12回放射性医薬品・画像診断薬研究会
    • 発表場所
      京都府
    • 年月日
      2012-12-15
  • [学会発表] (4) CTLA・4を標的とした新規PETプローブの開発2012

    • 著者名/発表者名
      東川 柁
    • 学会等名
      (4) 第52回日本核医学会
    • 発表場所
      北海道
    • 年月日
      2012-10-12
  • [学会発表] (3) がん微小環境中に発現するCTLA・4の可視化を目指した新規診断用ブローブの開発研究2012

    • 著者名/発表者名
      東川 柁
    • 学会等名
      (3) 第1回メタロミクスサマースクール
    • 発表場所
      長野県
    • 年月日
      2012-09-05
  • [学会発表] (2) がんイメージングプローブとしての64Cu-DOTA一抗CTLA-4抗体の有用性2012

    • 著者名/発表者名
      東川 柁
    • 学会等名
      (2) 第3回メタロミクス研究フォーラム
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      2012-08-30
  • [学会発表] (1) がん環境中に発現するCTLA・4の可視化を目指した新規分子イメージングブローブの開発研究の検討2012

    • 著者名/発表者名
      東川 柁
    • 学会等名
      (1) 第7回日本分子イメージング学会
    • 発表場所
      静岡県
    • 年月日
      2012-05-24

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公開日: 2014-07-16  

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