研究概要 |
成人性T細胞白血病(ATL)は発症するときわめて予後不良な腫瘍疾患である。その発症の原因はHTLV-1レトロウイルスの感染が原因であることが定義となっている。このことから本疾患はATLという腫瘍とHTLV1ウイルス感染が密接に関連した複合疾患でありその出力がきわめて予後の悪い薬剤耐性となっている。またこのような腫瘍疾患に関するアプローチは腫瘍のクローナリティーを解析することが重要であるが本疾患はそれをHTLV1ウイルスのインテグレーションサイトで解析できることが極めて有益なポイントである。 そこで本研究では、その発症原因のアプローチとして感染細胞のクローナリティーの解析を通じて、キャリアからATL発症に至る感染細胞の増殖の様態を明らかにする事を目指している。つまり具体的には、HTLV-1キャリアの末梢血中には多数の感染細胞クローンがポリクローナル増殖を示す中で腫瘍的な増殖の始まりを高感度に測定する事が本研究において最も重要な目的である。しかし、従来法ではこのよう解析は不可能であった。従って、この問題を解決する為に、次世代シークエンサーを用いた高感度かつ定量的解析法の確立が絶対不可欠と考えている。そこでその方法論の確立のため本年度はまずバイオインフォマティクス及びイン・シリコ解析.ウェット解析を平行させて行った。バイオインフォマティクス及びイン・シリコ解析としては、スーパーコンピュータにアクセスしパールプログラミング言語を用いてHTLV-1 Integration Siteとクローナリティーの解析用に独自にデザインしたcustomized programを完成させた。また、ウェット解析においては独自に開発した方法であるIntegration Site isolation, Tagシステムの有効性を確認する必要があった。従って、現方法論の感度.特異性.定量性.再現性を証明する為、適切なコントロールシステムをデザインした。コントロールシステムの確立には3つのクライテリアとしてproviral load(PVL), integration site, clone sizeのすべてが分かっているサンプルが必要であった。その為TL-om1というHTLV-1 Integration siteが1細胞につき1つという特徴を持ったATLのstandard細胞株を選択して次世代シークエンサーを用いて解析したところPVL 100%でありさらに,integration in Chromosomeが1つであることを確認した。次に、同様に患者検体の中からもあらかじめPVLが100%であるATL-急性型サンプルを選択しPVL 100%でsingle cloneである事を確認した。これらを確認した後に、Tl-om1と既知proviral loadのATL臨床献体サンプルを4つのcertain ratioで混ぜたサンプルを作成し解析した。その結果Observed patternはExpected patternとほとんど一致した結果、現方法論の有効性の確認に成功した。
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