研究課題
当該研究では、細菌感染時のオートファジーと細胞死の双方の誘導に関わる分子として、細胞死制御因子であるBclファミリー分子群に着目し、A群レンサ球菌(GAS)感染時の細胞死とオートファジーの解析を行った。栄養飢餓時のオートファジー誘導には、Beclin1やVps34等が複合体を形成する必要があるが、Beclin1にはBclファミリー分子のBcl-2が結合することが明らかとなっており、Bcl-2強発現細胞ではBeclin1へのBcl-2の競合的結合により、複合体形成とオートファジー誘導が抑制される。しかし、GAS感染時のBcl-2強発現細胞では、細胞死の誘導は抑制されたが、オートファジーの誘導は抑制されなかった。一方、Bcl-2と同じ細胞死抑制因子であるBcl-xL、Bcl-w、Bcl2A1強発現細胞では細胞死とオートファジーの両者が抑制された。次にBclxLの欠損細胞を作製し、本分子の内因性レベルでのオートファジーに対する影響を評価した。欠損細胞ではオートファジー誘導が促進されるという予測に反し、オートファジー誘導の抑制と細胞内生菌数の増加が観察された。ただし、形成されるオートファゴソームは通常の環状構造でなく、環が閉じ切っていない不完全なもの、あるいは環状構造ではない凝集体も多数認められた。同様に、オートファジー誘導能をBeclin1欠損細胞において評価した。オートファゴソームの数や大きさに差はなかったが、断片化したオートファゴソームが見られるなど形成異常が生じていることが示唆された。興味深いことに、Beclin1欠損細胞においてはGASの細胞侵入数が顕著に減少していた。以上より、細菌感染時には栄養飢餓時とは異なるBcl分子がオートファジーの誘導を制御していること、Beclin1がGASの細胞内侵入ならびに部分的なオートファジー誘導を制御していることが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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